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第427話

ソファーで寛ぐ俺の膝の上で、転がっている星の唇にキスを落として。穏やかな時間が過ぎていく土曜日の昼中、俺と星がテレビで観ているのはプロリーグのサッカーの試合。 映画の予定が変わっても。 星と二人、家でのんびりと観るサッカーは面白くて。 泣き腫らした目で、試合の行方を見守る星が可愛いすぎて俺の頬はニヤけていく。 「雪夜さん、ちゃんと観てないと試合終わっちゃう」 なかなか動かない試合展開の合間に、星にちょっかい掛けて遊んでいた俺は、頬を膨らませた星くんに怒られてしまった。 「オレだけ見ててって、お前が言ったんだろ。昨日の強請り方、すごかったもんな」 緩んだままの頬でそう俺が応えてやると、真っ赤になった星は俺を睨みつける。 「もぅ、そういうことじゃないですよっ!?」 「んなもん、分かってるっての……ほら、俺と一緒にサッカー観るんだろ?」 今日の星がいくら怒っても、可愛い星くんの頭から覗くものは金髪悪魔と似た角ではなく、仔猫の小さな耳だけだ。 少しだけ伏せられた仔猫の耳は、怒っている証拠……そのうちコイツは尻尾まで見えてくるんじゃないかと思えるくらいに、俺の膝で丸まる星は愛らしい。 けれど。 昨日のコイツは可愛いというより色気がすごかった。いつも受け身な星だが、昨日の誘い方は男らしい要素が多かったように思う。甘えて強請るのではなく、攻めてくるような強請り方だったから。 ……まぁ、どっちもエロいから俺得でしかねぇーんだけど。 昨日の小悪魔さの欠片も残っていない星は、俺が好きなサッカーを一緒に観たいからって、ルールもイマイチよく分からないまま真剣に画面を見つめていて。 星の髪を撫でながら、俺も同じように見つめていた試合の流れが変わったのは、後半の32分だった。 「うっわぁー、すごいっ!!」 どちらかのチームを応援しているワケでもなく、とりあえずゴールが決まったことに喜ぶ星くん。ミッドフィールダーからいい位置でボールを受けたフォワードは、そのまま流れるようにゴールを決めていたけれど。 「楽しい?」 サッカー経験者でも知識があるワケでもない星から見たこの試合は、一体どんなふうに捉えられているんだろうと思い、そう訊いた俺の手に触れた星はにこやかに笑っていた。 「うんっ!ルールはまだよく分かんないですけど、なんかすっごくドキドキするから。それに、雪夜さんと一緒に観てると分からないことも教えてもらえるので」 「オフサイドとか、分かりにくいしな。説明できる範囲で教えてやるけど……詳しく知りてぇーなら、その辺のサッカー漫画読んだ方が早いかもしんねぇーぞ、お前漫画好きだろ?」 「好きだけど、オレは雪夜さんの方が好きだから……だから、一緒にいるときはなるべく雪夜さんから教わりたいんです。だめ……ですか?」 触れていた手にきゅっと力を込めて、上目遣いで俺を見る星に全てを奪われる。どんどん俺の色に染まっていくコイツに、俺は一生敵わねぇーんだろうなと、心の中で呟いた瞬間だった。

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