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第433話

「アイツは男、そんでもって俺のダチ。本当にソレが恋心なのか一回よく考えてみろ。いくらキレイだからって、男には変わりねぇーぞ」 「いや……まぁ、うーん」 男とか女とか関係なく、俺は星だから触れたくてアイツ以外いらないと思った。初めて俺が本気で手に入れいたいと思った相手、俺の心を掴んで離さない魔性の男の子が星くんだ。 大丈夫かもしれないと思うより先に、大丈夫な相手だったこと。一目惚れだったし、なんなら自覚する前に手を出している俺が康介に言えることではないが。 「アイツの人生背負ってまで、ヤリてぇーと思うか?」 ランに言われた言葉の意味が、今ならよく分かる。あのときの俺は、そんな覚悟なんてまだできていなかったけれど。それでも構わないと心の何処かで思えたから、きっと俺は出逢ってすぐにも関わらず、アイツに手を出していたんだと思う。 「それは無理。え……ってか白石、話が重すぎじゃね?」 幼い顔をして俺を見る康介は、何も知らないままでいい。コイツはフラれるより先に、諦めという方法を取らせた方が良さそうだ。 「重くねぇーよ、お前がアホな行動取る前に止めてやろうと思ってるだけ。光はお前が扱えるような野郎じゃねぇーし、女すらまともに抱いたことないお前が、男なんか相手できるワケねぇーだろ」 実際問題、受け入れ態勢のない場に突っ込むのだから、リスクある行為なのは言うまでもない。康介の場合、女に相手してもらえず、キレイな男なら……って考えが、そもそも終わっている気がするけれど。 唇を尖らせ、納得できないといった顔をして俺を見る康介に、俺は余計な一言を添えてやることにした。 「もし仮に光と付き合えたとしても、同じ男なら抱かれる側はお前かもしんねぇーしな」 背丈はそこまで変わらない、康介と光。 野郎らしさで言えば群を抜いて康介だが、性格の悪さと妖艶さは光のほうがずっと上だ。光が受け身だと決まっているわけじゃないのだから、有り得ない話ではないだろう。 ……まぁ、考えたくない話ではあるけれど。 しかしながら、あの星でさえ、最初は俺に突っ込むことを一瞬でも考えたのだから、男の性とは恐ろしい。 「……白石、お前は酷いヤツだな」 「酷くて結構。余計な傷つくる前に止めてもらえるだけありがたく思え、康介」 酒のせいか、徐々に潤み始める康介の瞳。 「しらいしぃーっ、やっぱり俺は男の中じゃ、お前が一番好きだぁーっ!!光ちゃんのことは仕方ねぇから諦めるけどさぁ、俺はいつまでも白石と一緒にいたいぜッ!!」 「デカい声で堂々と、気持ちわりぃーコト吐かしてしんじゃねぇーぞ。つーかこんなコトで泣くな、バカ」 ゴシゴシと服の袖で涙を拭いて、ジョッキに残ったビールを一気に飲み干した康介は、店員を呼び付けビールを追加注文してしまう。 今日は恐らく、潰れるまで飲むんだろう。 泣いて笑って、飲みすぎて寝落ち……単純バカなコイツの酒に、付き合わされる俺の身にもなってほしいものだ。

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