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第436話

「マジなワケないだろう。毎年していたら、それこそ笑えないからな。数年前に、一度あった出来事なだけだ」 「いや、それマジじゃねぇーか。お前ら本当に、アホくせぇーコトしてんのな」 ……この二人に訊いた、俺がバカだった。 「アホくさいって失礼しちゃう。クリスマスなんて、俺が笑えればいい日なんだから」 「お前はクリスマスに限らず、いつでも優いじめて笑ってんだろ」 「まぁ、そうなんだけどね。こうやって笑い合える時間は、お互い今しかないから……学生のうちに楽しめることは、楽しんでおかないと損でしょ?」 「アホでも何でも、好きに言えばいい。プレゼントや場所に、拘りなんざないからな。ただ……この先の将来、お互いの思い出になればと思っているだけさ」 そう言って光に微笑みかける優は、何処が切な気で。儚さすら感じる光の表情に、掴めない何かが見えた気がした。コイツらの隠された関係に首を突っ込むつもりはないが、今にも消えてしまいそうな二人を見ていると若干ではあるが胸が痛む。 永遠なんてものはないんだろうが、それでもお互いが望むなら傍にいることは可能なハズなのに。これから先、幾つもの分岐点に立たされていくことを知りつつ、手を取り合ったこの二人は、俺や星とは違う覚悟を持っているんだろうと思った。 「お前らさ、そんだけ想いあってんなら毎度のように俺を呼び出すんじゃねぇーよ。関係知る前と後じゃ、それなりに気の遣い方ちげぇーんだからな」 「すごいね、優。このユキちゃんが、俺たちに気を遣えるようになったらしいよ?」 「星君マジックか」 「おい、悪魔二人。人の話を聞け」 「ちゃんと聞いてるよ。ユキちゃんを召喚するなら今日と一緒で、せいを囮にすればいいってことでしょ?そんなことはね、ユキちゃんに言われなくても分かってるから大丈夫」 「残念ながら、星君もいないと来ないなんてのはこの王子様には通用しないぞ、雪夜。気を遣う前に自分の立場を考えてみることだな」 一瞬だけ部屋に漂った切なさが、二人の悪魔によってくだけた空気に戻っていく。 なんとも素直じゃない友人に、俺が返すのは苦笑いだけだ。気を遣う必要はないとストレートに言うことすらできないヤツらが、この二人。遠回しすぎる思いやりに、わざわざ真正面からぶつかる必要はないだろう。 「ユキちゃん、お鍋にうどん入れてきて」 「ついでに、お茶のお代わりも頼む」 「お前ら、ふざけんじゃねぇーぞ。煙草吸ったらやってやっから、ちょっと待ってろ」 星と付き合うようになってから、俺は自分の大切なモノに気づかされている。今までは面倒で気にすらしていなかった友人のことも、嫌いな兄妹のことも……それに、諦めかけた夢のことだって。 どーでもいいと感じていたことが、少しずつではあるけれど、そうでないことをアイツは知らぬ間に俺に教えてくれているんだと思う。

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