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第444話

「どうやって、雪夜さんを誘えばいいと思う?」 弘樹の課題も終わって、ゆっくりと話せる時間ができたと思った頃にはもう夜になっていて。オレはベッド上、弘樹は床に敷いた布団の上で、二人揃って色違いのクッションを抱きながら話しているのはクリスマスのことだ。 「俺、思ったんだけどさ。セイが行きたい所とか、あの人とクリスマスにしたいことをそのまま伝えるだけでいいと思うんだよ」 「行きたい所、したいことかぁ……オレ、雪夜さんと一緒にいれるだけで嬉しいんだけど」 「せっかくクリスマスなんだし、その気持ちにプラスして甘えてみるものアリなんじゃね?一緒にケーキ食いたいとか、些細なことでもなんでもいいじゃん」 勉強してるときとは違って、真剣にオレと雪夜さんのデートのことを考えてくれる弘樹。学校のことも雪夜さんのことも、何でも話せる弘樹には少し恥ずかしいけど思ったことが言えるから。 「オレ、雪夜さんが運転してる姿が見たいかも。ちゃんと顔が見えるわけじゃないんだけど、あの横顔が好きなんだ……車の中なら周りを気にせず話もできるし、デートって感じしない?」 運転に集中しながらも、煙草を咥えて怠そうにしている雪夜さんを見るのが好き。雪夜さんの気怠い空気感は、オレの緊張を和らげてくれるから。 「じゃあ、ドライブデートで決まりだな」 オレの言葉で、弘樹は簡単にそう言うけれど。 「でも、運転するのオレじゃないし、雪夜さんは迷惑だって思わないかな?」 結局、オレの意見は甘えることになってしまうんじゃないかって。誘っておいて、連れってってくださいなんて烏滸がましいんじゃないかって。尻込みしてしまうオレに、弘樹は大きく首を振った。 「いやいや、あの人がそんなこと思うわけねぇじゃん。セイがドライブデートしたいって素直に誘えば、あの人なら『どこ行きたい?』って必ず訊いてくれるから大丈夫」 「なんか、オレより弘樹の方が雪夜さんのこと分かってるみたいで、ムカつくんだけど」 「え?あ、いやぁ……なんつーか、そうなんじゃねぇかなって思っただけ」 オレの狭い心の中は、雪夜さんでいっぱいで。 弘樹の好きの意味が違うことくらい分かっているのに、止まることのない嫉妬はオレの心を黒く染めていく。 「いくら弘樹の憧れの人でも、雪夜さんはオレのなんだから……絶対に、誰にもあげないもん」 「んなもん分かってるし……ってか、相談しといて俺に妬くなよなっ!?」 「むぅー」 雪夜さんの全てを、分かるようになりたい。 でも、雪夜さんが何でも受け入れてくれるからって、甘えすぎて迷惑をかけることは避けたい。 それに、そもそも全てを理解するなんて無理なことくらいオレでも分かってる。 それでも、今は弘樹の方が雪夜さんの気持ちに近い気がして。雪夜さんに今すぐ噛みつきたくなった衝動を紛らわすために、ぎゅーっと強く抱きしめたクッションは、へにゃりと形を変えてしまった。

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