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第445話

「セイちゃん、今は拗ねてる暇なんかないぜ?プレゼントとかは?どうすんの?」 「んー、雪夜さんが欲しい物が分かんなくて……でもクリスマスだし、何か渡せたらいいなって思うんだけど、何がいいと思う?」 本人に聞くのが一番だとは思うけれど、どうせならオレが雪夜さんのサンタさんになってみたい。でも、雪夜さんに一体何をプレゼントしたらいいのか分からないオレは、弘樹と二人で頭を抱えていた。 「あー、そんじゃあシガレットケースは?あの人スモーカーだろ、使ってくれそうな物だとは思うぜ?」 「ソレ、考えた。でもシガレットケースって、詰め替えなきゃならないでしょ。1日二箱ペースの雪夜さんにあげても、面倒な作業が増えるだけじゃん?」 「そっかぁ、じゃあジッポは?」 「雪夜さんが持ってるジッポは、お気に入りだと思う。あのジッポ以外で煙草吸ってる姿、オレ一度も見たことないから。大事な物とプレゼント被るのは、極力避けたいなって」 クリスマスで、こんなに悩むなんて思わなかった。色々と考え込むオレと違い、ボーっとして何かを思い浮かべている弘樹はオレを見て首を傾げる。 「あの人が使ってるジッポって、シルバーのやつだろ?アレ、確かブランド物のはず……案外、前の女に貰ったやつだったりしてな」 冗談のつもりで言われた何気ない一言は、鋭く尖ったナイフみたいでオレの胸に突き刺さる。それじゃなくても今のオレは、雪夜さんに噛みつきたい気持ちを堪えているのに。 嫉妬で狂ってしまった時のように、オレだけの痕を雪夜さんの身体に刻み付けておきたい。 簡単に、前の女っていうけれど。 オレと付き合う前に雪夜さんが身体を重ねた相手が、一体どれだけいると思ってんの。 「弘樹……オレ今機嫌悪いから、それ以上変な事言ったら窓から追い出すよ?」 「ああ、ごめんッ!ごめんなさい!!なんか今のセイ、すっげぇ王子に似てて怖いんだけど……セイから、殺気が漏れてる」 「弘樹が、おかしなこと言うからでしょ。本当に女の人から貰ったやつだったら、いくら雪夜さんが大事にしてるものでも捨ててやるんだから」 「いやいやいやいやっ!待って、待ってセイちゃんッ!?」 そうじゃないって、思いたいけれど。 一度考えたら、モヤモヤした感情が止まらなくて。過去の女の人の話を聞いたときでさえ、感情を抑えきれなくて雪夜さんの身体中傷だらけにしたのに。 もし、大事に使ってるあのジッポが弘樹の言ってるような人から貰ったものだったとしたら……オレ、本当にあのジッポ捨てちゃいそうだ。 「弘樹のばかっ!!」 「泣くなよっ!?え、ちょっと待ってくれっ!!」 「もー、うるさいよー?」 「王子っ!助けてっ!?」 「あーっ!ひぃ君、なんでせい泣かしてるのっ!?」 「いや、俺が悪いんだけど、俺じゃないんッスよ!!」 「雪夜さんもばかっ!みんなばかだもんっ!!」 八つ当たりも甚だ強い。 でも、なんだかすごくムカつくんだ。

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