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第446話
「なるほど、そういうこと……結論から言うと、悪いのは100パーセントひぃ君だね」
騒がしくなったオレの部屋に割り込んで入ってきた兄ちゃんは、弘樹から一通り事情を聞くとオレの涙を指で拭い、冷静に話してくれた。
「まぁ、ひぃ君の考えも分からなくもないけど。ユキちゃんが使ってるジッポ、アレ普通に買ったら10万以上するやつだし」
「ハァっ!!アレ、そんなにするんっスか!?」
「うん。でも、ひぃ君の予想はハズレ。ユキは絶対に女からの貢ぎ物は受け取らないし、あのジッポはユキのお兄さんが使ってたやつみたいだから」
予想以上の金額に驚いている弘樹と、オレの頭を撫でて優しく笑ってくれる兄ちゃん。そんな兄ちゃんの言葉に一安心したオレは、新たな疑問が頭に浮かんで。
「お兄さん?どっちの?」
首を傾げて訊いたオレに、兄ちゃんはスマホを弄りつつ答えてくれる。
「俺もそこまでは、よく知らないの。でもジッポと車は兄貴のお古だって言ってた気がするけど……もう面倒だから本人に訊いてごらん?ついでにデートのお誘いもしたらいいよ。はい、そのうち繋がるから」
「え、電話かけたの!?」
手渡された兄ちゃんのスマホを受け取り、心の準備ができないまま、機械的なコールの音に耳をすませるオレに、弘樹は頑張れって口を動かして笑っていた。
『……ナニ』
「雪夜さんっ!?」
『ん?光……じゃなくて、その声は星くんじゃん。どーした、悪魔にいじめられたか?』
電話の相手がオレだと分かると、雪夜さんの声が最初の刺々しい感じじゃなく、優しい声色に変わっていく。とても些細なことでも、オレだけの雪夜さんだって思わせてくれる雪夜さんの声は、オレの黒く染まる心を一瞬で溶かしてしまう。
「いや、あの……」
声が聞けただけで嬉しくて、本題をすっかり忘れ照れて笑うオレに、向けられる二人の視線は穏やかだけれど。
『星くん?』
今の状況を何も知らない雪夜さんが、心配そうにオレを呼ぶから。ドキドキとうるさい心臓の音が雪夜さんには聞こえないように、オレは雪夜さんに思いを告げる。
「あの、えっと……クリスマスの日にオレ、雪夜さんとドライブしたいんです。だから、その……迷惑じゃなければデートしてほしいなって。あ、あと、雪夜さんが使ってるジッポって、誰から貰ったものですか?」
散々悩んだのに、結局何が言いたいか上手く纏まらないまま誘ってしまい、どうしようと内心ビビりまくるオレと電話越しで笑っている雪夜さん。
『俺から誘うつもりでいたのに、星に先越されたな。すげぇー嬉しいデートのお誘いありがと、星くん。それと、ジッポは飛鳥から貰ったやつだけど……なんで今、コレの話なんだよ?』
カシャンと電話越しから聞こえた音は、雪夜さんがジッポを手に持っている証拠で。なんでこんなことになってしまったのか、プレゼントのことには触れぬまま、オレが雪夜さんに詳しく理由を話すと、電話越しの雪夜さんは弘樹に代われってオレに促し、深い溜め息を吐いた。
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