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第456話

ランさんのお店を出て、オレと雪夜さんが次に向かった場所は、遊園地の隣にあるアウトレットモール。ドライブがてらに立ち寄って、たまには一緒にショッピングでもしようと雪夜さんと二人で決めていた場所だ。 雪夜さんの隣をひょこひょこと歩き、迷子にならないように雪夜さんのコートの裾を軽く握ったりして。 手は繋げないけれど、歩幅が合うだけで嬉しく思ったり、何気ない会話をしながら笑いかけてくれる雪夜さんの笑顔にドキドキしたり、オレの心は忙しかった。 「星くん、着いた」 特に回るお店を決めていたわけじゃないけれど、200以上のお店が並んでいるこの場所で、雪夜さんはオレが勝手に行きたいなって思っていたお店に一番に連れてきてくれて。 「……え、なんで分かったんですか?」 そう尋ねたオレに、雪夜さんは苦笑いで答えてくれる。 「前に一緒にテレビ観てたとき、ここのアイス食いたいって自分で言ったコト覚えてねぇーの?」 「ウソ、オレそんなこと言ってました?」 「その様子だと、全く覚えてねぇーんだな。オレも歌ってもらいたいーって、星くんウトウトしながら俺に言ってたんだよ。ほら、今のうちに食いたいアイス選んどけ」 そう多くはない順番待ちの列に並び、どれにするか悩むオレの隣で、雪夜さんはオレの髪に指を絡ませ遊んでいて。自分で言ったことをオレは覚えていないけれど、雪夜さんはちゃんと聞いててくれたことが分かって嬉しかった。 「ベリーか、チョコか……悩みますね、カップか、ワッフルコーンかも選べない……んー、どうしましょう」 悩んでもなかなかオレの中の答えに辿り着けなくて、オレは隣にいる雪夜さんを見上げてしまう。 すると、雪夜さんは優しく笑ってこう言ってくれたんだ。 「さっき、ランの店でベリー系のケーキ食ってたから、味変えたいならチョコだな。器、せっかくだからワッフルにしとけ」 「じゃあ、器はワッフルで、アイスは……んー、ベリーも捨て難いけど、チョコにします」 「また連れてきてやるから、ベリーは次の来たときのお楽しみだな」 少しの待ち時間のあと、店員さんにクリスマスソングを歌ってもらいながら作ってもらったアイスクリームを受け取り、外のベンチでアイスクリームを頬張るオレに、雪夜さんはニヤリと笑うとオレからスプーンを奪い取ってしまう。 「星くん、あーんって、口開けてみろ」 言われたことがよく分からないまま、雪夜さんの言う通り小さく口を開けて待っていたオレだったけど。オレの口のすぐ目の前まで差し出されたアイスクリームは、オレの口に入ることなく雪夜さんに食べられてしまって。 「あっ!ちょっと、雪夜さん意地悪ですっ!!」 「自分で言ったコト覚えてなかった、星くんへのお仕置き。やっぱお前、怒った顔も可愛いな」 「っ……」 恥ずかしくて何も言い返せないオレは、このあとも何回か雪夜さんに遊ばれながら、アイスクリームを食べていた。

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