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第459話

「雪夜さん……あの、オレから渡したいものがあるんですけど……」 俺が星にプレゼントを手渡そうと思ったとき、星から言われた言葉に手を止めた俺は、ゆっくりと話し出した仔猫からの次の言葉を待った。 背負っていたリュックの中から紙袋を取り出した星は、少しだけ上目遣いで俺を見る。 「今日は、とっても素敵な時間をありがとうございました……あの、オレからのプレゼントですっ!」 俯き加減で両手を伸ばし、星から渡されたプレゼントを受け取った俺は、中を確認することなく仔猫に告げる。 「ありがと、星くん。俺からもあんだけど、今渡していいか?」 いつでも渡せるように、腕に引っ掛け歩いていたホワイトカラーの紙袋を俺は星に手渡すと、星は嬉しそうに目を細めて笑顔を見せてくれる。 「ありがとうございます、雪夜さん……じゃあ、一緒にせーので開けてもいいですか?」 「……ん、分かった。そんじゃ、一緒に開けてみるか」 内心、お前が相手がじゃなければ絶対しねぇーよと思いつつ、仔猫の好きにさせてやろうと甘い考えの俺は、ラッピングのリボンに手をかける。 「せーのっ!」「せーの」 声を合わせ、開けられた包みの中。 お互いにプレゼントを確認した俺たちは、二人揃ってフリーズした。 「……マジ?」 「ウソ……」 お互いにデザインは異なるものの、渡したハズのアイテムは二人の手元に確かにあって。顔を見合わせた俺と星は、お互いに笑いが止まらなかった。 「俺ら、アホだな」 「うん、ホントですね」 話し合ったわけでもないのに、お互い相手のためを想い用意したプレゼントは、マフラーだったから。俺が着ている服のメーカーのマフラーを選んでくれた星と、オーブのモチーフがあしらわれたブランドのマフラーを選んだ俺。 「ありがとうな、すっげぇー嬉しい。もしかして、このプレゼントの意味も一緒だったりすんのか……ってか、お前の欲しい物ってなんだったんだよ?」 「あ……えっと、首に巻くマフラーは独占欲とか色んな意味が込められるから。オレの代わりに、寒がりの雪夜さんを温めてほしいなって思って選びました」 照れながら恥ずかしそうに説明する星だけれど、その思いは俺と変わらない。 「それと、欲しかった物はもう手に入ってるんです……オレは雪夜さんと一緒に過ごせる時間が、なによりも欲しかったから」 「星、俺もお前と全く同じコト考えてた」 「雪夜さん……」 星の手に握られたマフラーを首に巻いてやり、俺は星がくれたマフラーを身につけ小さなカラダを抱き寄せる。見つめ合い笑い合って、ツリーの光の影に隠れた俺たちは、温かな口付けを交わした。 「メリークリスマス、星くん」 離れていても、お互い思いは通じ合う。 そんなことを証明してくれた星からのプレゼントは、俺たちにとって、特別な思いが込めれた二人だけのクリスマスプレゼントとなった。

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