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第460話
「せーい、余ったチキンで昼はサンドウィッチにしようと思ってんだけど、食えそうか?」
「ん……食べぅー、ねみゅたぃ……」
「分かった、急いでねぇーから好きなだけ寝とけ」
クリスマスのデートを、たっぷり満喫して。
そのまま星を俺の家へと連れ帰り、夕飯は二人でチキンを食ったりして。昨日は1日中はしゃいでいた仔猫は、愛を確かめ合う前に眠りに就いてしまったから。
性なる夜……ってワケにはいかなかったが、今日の朝からフルコースで星くんを堪能した俺は、色々スッキリしているけれど。俺に美味しく喰われた星くんは、ベッドで丸まり夢の扉を開けてしまう。
だがその前に、星のカラダをキレイにしてやり俺の服を着せて。昼メシの確認を取った俺は、おそらく昼過ぎまで起きることのない仔猫に声を掛けた。
「おやすみ、星」
年始に実家に帰省しなきゃならなくなった分、星との予定が1日キャンセルになったこともあり、久しぶりに重ねたカラダはすげぇー心地良かった。
昨日とは違い、今日は特にデートの予定もなく時間を穏やかに使える……そう思い、じっくりと遠慮なく俺は星を可愛がることができた。
昨日のデートのことを思い出し、クリスマスの朝から幸せいっぱいだと、天使のような微笑みをしていた星くん。そんな星の表情が快楽に溺れていく姿は、何度抱いても飽きることはない。
たっぷり泣いてもらったし、甘い声で俺を強請ってくれた星は、寝起きから体力を使い果たしてしまったけれど。朝からあれだけ乱れれば、そりゃあ疲れて二度寝したくもなるだろうと。
安心しきった表情で眠り始めた仔猫を眺め、このまま時が止まってしまえばいいのにと、くだらないことを考えてみたりした。
今年も残すところ、あと僅かだ。
新しい年を迎えても、俺はコイツの側にいたい。
長い前髪を指で払い、普段は隠れていることが多い星の額にキスを落として。服を着るため、ベッドから抜け出そうとした俺を引き止めたのは、愛する仔猫の小さな手だった。
「ッてぇ……」
離れたくないとでもいうように俺に伸ばされた星の手は、掴むものがなく素肌の俺の胸を思い切り引っ掻いてシーツへと落ちていく。
ヒリっと焼けるような痛みとともに、愛おしく思えるほどの赤い線を描いて新しい爪痕が俺のカラダに刻まれた。もういっそこと、消えない傷痕でも残してくれたら……そんなことを思いながら、寂しそうにシーツを握る星の手に触れてみる。
この手が掴もうとしている夢に、その未来に俺がいることをただ願って。どれだけ愛おしく感じても、数日経つと消えてしまう星が残す傷痕のように、いつかお前が俺の前から消えてしまわぬように。
星と思いは同じだとしても、贅沢すぎる時間を過ごしたあと、俺が襲われている不安感をコイツに感じてほしくはないから。
今はまだ離れずに側にいてやろうと、服を着きて煙草を吸うのを諦めた俺は、温かな星のカラダを抱きしめて、この時が永遠になるよう願いながら、そっと目を閉じ傷痕の痛みを感じていた。
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