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第462話
このバカな康介に血も涙もないと思われるほど、星と出逢うまでの俺は人間らしくなかったようだ。確かに俺は、色々諦めてなんとなく生きてきたし、そう思われていても仕方がないのかもしれないが。
ただ、仔猫ちゃん様々ってのは、あながち間違っていないのかもしれない。愛する星くんからは、夕飯作って待ってるって、嬉しいLINEが届いている。
なんとも家庭的な星は、料理上手で包容力があり、笑顔が可愛く、基本的には穏やかな性格だ。星が持っている癒しのオーラに一度包まれてしまえば、その安らぎと心地良さを求めてしまうのは当然のこと。
その上、夜の営みまで恥じらいながらも強請ってくれるのだから……そんな愛おしい相手を大切にしたいと思わないヤツのほうが、どうかしている。
星が好きな、猫のスタンプを送り返して。
幸せだと思える今の俺は、康介が言うように、過去の俺とは違うのだろうと実感できる。
持っていたスマホをパーカーのポケットにしまい込み、確認作業を再開した俺に、声を掛けてくる康介の手は動くことがないままで。
「白石さ、年明けどうすんの?3日までバイトでも、そのあとは時間あんだろ。白石は、実家帰ったりしねぇのかよ?」
喋る前に手を動かせと思いつつ、誰かに見られるわけでもない裏の仕事している今は、康介の話に応えてしまいがちになる。
「あー、とりあえず年越しは仔猫と初詣行って、年始は仔猫も親戚んとこ行くらしいから、俺も実家帰る予定でいるけど……はぁ?コレ在庫ありすぎだろ」
「けど?」
「あぁ……帰りたくねぇーなって」
溜め息を吐きそう呟いた俺と、不思議そうな顔をして俺を見る康介。
「親がうっさいとか?俺も母ちゃんに会ったらなんて言わるか……もう、今から恐怖だ」
「ちげぇーよ、うちのクソ親共は年越し毎回ハワイ行ってから家にはいねぇーんだ。俺が会いたくねぇーのは兄妹、特に妹な」
「はぁッ!?白石ッ!!お前んことって、兄貴だけじゃねぇのかよッ!?」
「いや、誰が兄貴しかいねぇーなんて言った?俺の下にもう一人、クソアマがいんだよ」
「それを早く言えッ!ついでに紹介しろッ!!」
飢えた狼は恐ろしい。
人の妹喰ってどうすんだ、康介。
「イヤだ、つーかお前は早く仕事しろよ」
コイツが持ち分終わらせてくんねぇーと、俺は可愛い仔猫の元に帰れねぇーのに。自分の仕事放ったらかしで、騒ぎ出す康介はすげぇーウザい。
「妹の歳は?名前は?プリとかねぇの?なぁー白石ッ!?」
「うっせぇー変態、教えねぇー」
「なんだよッ!?白石まさかシスコ……ッてぇ!!」
「なワケねぇーだろ、バカも大概にしとけや。会いたくねぇーっつってんのに、どーやったらシスコンだって勘違いできんだよ」
本日二度目の蹴りをお見舞いし、募る苛立ちを発散して。帰ったら星くんに癒してもらおうと決めた俺は、このあとも作業が終わるまでの時間、騒ぐ康介を蹴り上げながら二人仲悪く与えられた仕事をこなしていた。
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