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第473話
【星side】
お正月も過ぎて、やってきた三連休。
年明け振りに雪夜さんに会えたオレは、雪夜さん家のソファーに腰掛けて雪夜さんに膝枕している。
ふわふわの髪に指を絡ませ時折髪を解いてみると、気持ち良さそうに雪夜さんの瞳が細まっていく。
「雪夜さん、今日は随分と甘えん坊ですね?」
「んー?ん、ちょっとな……」
疲れきった姿をオレに見せる雪夜さんは、珍しくオレに甘えてばかりいて。そんな姿も可愛らしいなって思うけれど……この人、本当に成人式出なくてよかったのかな。
兄ちゃんは今日の早朝から、優さんと一緒に成人式に行くってはしゃいでいたのに。新成人の人たちみんなが式に出席するわけじゃないんだって、目の前にいる愛しい相手を見つめ、オレはそんなことを考えていた。
「せーい、ナニ考えてんの?」
髪に触れるオレの手が止まり、オレを見上げそう訊いてくる雪夜さん。絡まる視線に誘われて、オレの考えていたことがスルリと口から洩れていく。
「あ、いやぁ……その、雪夜さんの晴れ姿をちょっとだけ見てみたかったなぁって」
「……あぁ、式のコトか。俺じゃねぇーけど、飛鳥のならスマホん中にデータあるぞ。見た目俺と似たようなもんだし、見てみるか?」
オレは雪夜さんの問いにコクコクと頷くと、雪夜さんは起き上がってテーブルの上に置かれたスマホを手にし、再びオレの膝に転がってくる。
「ん、コレが兄貴の成人式ん時のやつ」
雪夜さんのスマホを手渡され、画面を覗き込んだオレは雪夜さんとそっくりな飛鳥さんの姿に驚きを隠せなかった。
「……雪夜さん、じゃないんですよね?」
「俺がそんな派手な袴、選ぶと思うか?」
ギラギラした袴姿で、自信ありげに笑う写真の中の人物。容姿だけは似ていると雪夜さんが前に言っていたけれど、お兄さんと雪夜さんがここまで似てるなんてオレは思っていなかった。
「確かに雪夜さんっぽさはまったくないですけど、お兄さんよく似てますね」
「俺っぽくないって、俺じゃねぇーしな」
「そうなんですけど、なんというか……雪夜さんの気怠い雰囲気が、お兄さんにはどこにもない感じがするんですよ。なんかすごいです、とってもやんちゃそう」
「ソレ兄貴が二十歳ん時だから、今はもうちょい落ち着いてるけどな。正月実家帰った時に、俺のスマホで勝手にその写真撮って保存するようなアホだ」
「なるほど、雪夜さんもお正月は実家帰られたんですもんね。久しぶりにご兄妹に会ってみて、どうでしたか?」
「……なんつーか、すげぇー疲れちった」
怠そうにそう言い、スマホを握るオレの手にそっと雪夜さんの大きな手が重なった。淡い色の瞳が切なげにオレから逸らされて、雪夜さんを纏う空気が変わる。
成人式という節目の日。
オレが愛する雪夜さんは、また一つ大人になるための悩みを抱え、オレの側で静かに目を閉じていた。
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