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第475話

ぎゅっとオレに抱き着いたまま、実家に帰って何があったか詳しく話してくれた雪夜さんは、オレの背中にぴたりと頬を寄せる。 「オレ、拒絶しちゃった妹さんの気持ち……なんとなくですけど、分かる気がします」 「お前と華は、全然ちげぇーのに?」 「んー、本当になんとなくですよ?オレにはあの時雪夜さんがいたし、兄ちゃんだってあのあと接し方を大きく変えることはしなかったから、オレはそこまでならずに済みましたけど」 「けど?」 「もしもあの時、誰も助けてくれなくて、兄ちゃんがオレから離れちゃってたら……今みたいな気持ちには、なってなかったのかなぁって」 「まぁ、星には俺がいるからな。もとをただせば、あんなことになっちまったのも俺が原因だし」 今の雪夜さんはいつもの気怠るさに加えて、とってもナーバスで、なんだか愛おしいさが増しているように思う。オレのお腹の前で組まれた雪夜さんの腕に手を重ねて、そんなことないと伝えるためにオレは小さく首を横に振った。 「星くん、好き……」 「オレも、雪夜さんが大好きですよ?」 顔は見えないけど、オレの後ろで嬉しそうに笑っている雪夜さん。オレはそんな雪夜さんに、オレが思う妹さんの気持ちを話してみようと口を開く。 「小さい頃って、自分に優しくしてくれる人や遊んでくれる人、お菓子やおもちゃをくれる人とか、我が儘きいてくれる人はみんな好きだって思いませんでした?その延長で、妹さんはきっと、雪夜さんが大好きだったんじゃないかなって思うんです」 「好きは好きで、鬱陶しいんだけどな」 「でも、その逆で意地悪な人は嫌いだったり、小さい頃の好き嫌いって今考えると結構単純だった気がするんですよ。オレもそうでしたけど……その大好きが恋心だって勘違いしちゃったり、自分だけの兄ちゃんだっていつの間にか思い込んじゃったりして」 「俺、兄妹にそんな気持ち抱いたコトねぇーわ。とりあえず、全員うぜぇーとしか思ってなかった」 なんとも雪夜さんらしい言葉が返ってきて、オレは笑い混じりで雪夜さんへ話を続ける。 「うまく言えませんけど、妹さんは寂しいだけなんじゃないでしょうか?好きになればなるほど、離れてしまう雪夜さんに傍にいてほしいって、きっと素直に言えないだけなんです。だから、そのときは拒絶するしか方法がなかったんじゃないですか?」 恋人に向ける好きとは違う、特別な好き。身体を繋げたいとか、そういったことではなくて。理想のお兄ちゃんが好きな気持ちは、オレにもよく分かる。 「星くん、お前はいい子すぎる。アイツは、そんな可愛らしいヤツじゃねぇーぞ」 「理想のお兄ちゃんよりも心を奪われる人に出逢えたら、妹さんも自分の気持ちを受け入れられるようになると思います……オレにとっての、雪夜さんみたいな人に」 そうは言ってみたものの、雪夜さんを越えるような人はそうそういないと思ってしまったオレは、自分の発言に苦笑いした。

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