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第481話

「訊きたいことが山ほどあるんだけど、とりあえず、今日のアレなに?」 LINE通りに、部活が終わってから家に来た弘樹をオレの部屋へと招き入れ、疲れきった様子の弘樹をベッドへ座らせたオレは、立ったまま腕を組んで弘樹にそう問いただす。 「あーんと、昼は西野の命令で……ってか、始めからちゃんと話すからまずは聞いてくれ」 「わかった、じゃあどうぞお話ください」 「……セイ、すげぇ機嫌悪いじゃん」 まるで尋問をするように、オレが不機嫌丸出しの態度で弘樹に接すると、弘樹は表情を暗くしてしまう。でも、お昼ご飯が味気なく感じたのは弘樹と西野君のせいだから。 「そりゃそうでしょ?何も分からないまま、二人と一緒にお昼食べても全然美味しく感じなかったんだから。何がどうなってるのか、説明して」 西野君には訊けないけれど、弘樹になら色々言える。隠しごとをされているとは思わないし、二人のことだからオレが色々訊くのは間違ってるのかもしれないと思って、今までは何も言わずにいたけれど。 たった1週間程度でそれも限界を迎えたオレは、弘樹の話を聞くために勉強机の椅子に腰掛ける。オレと目を合わせることはせず、話し始めた弘樹は暗い表情のままで。 「クリスマスに、西野と二人で遊びに行ったって話はしたよな?んで、セイに話してないのはその先のことなんだけど……俺、そのときに西野に直接訊いたんだんだ」 「訊いたって、ナニを?」 「夏休みに、俺が目撃した西野のこと……やっぱりアイツ、何人かのリーマン親父たちと関係あったって」 「……じゃあ、弘樹が言ってたことは本当だったってこと?ウソでしょ、どういうこと?」 弘樹はずっと、疑いの眼で西野君を見ていたんだ。けれど、弘樹のその考えは西野君の本人によって肯定されてしまっていたなんて。 そんなこと、動揺せずに聞き入れられるわけがないのに。 「セイ、やっぱりアイツには関わらない方がいい」 オレの目を真っ直ぐに見つめた弘樹は、そう言ってくるけれど。 「ちょっと、待って……それじゃあ、どうして弘樹は西野君と仲良くしてるの?弘樹が言ってる意味も、してることの意味も、オレ全然分かんないよ」 弘樹と西野君に、すっかりおいてけぼりのオレは何がなんだか分からない。弘樹の話しを聞いて余計に混乱してしまったオレは、西野君がしていたことに驚きとショックを隠せなかった。 それでも、何があったのかをオレに伝えようとしている弘樹は話を続けていく。 「あのな、俺クリスマスに西野から告られたんだ。付き合ってくれるなら、身体売るのもやめるって言われて……俺もよく分かんねぇんだけど、アイツの話し聞いてるうちに今の状態になっちまった」 大きな溜め息とともに、一気に吐き出された弘樹と西野君の関係。西野君の隠されていた一面をこんな形で知ることになったオレは、感じたことのない胸の痛みを抱えることになってしまった。

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