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第482話
疑いを通り越して確信に変わった事実を、オレは受け入れることができなくて。話せと言ったのはオレの方なのに、弘樹に何も言えないまま黙り込んでしまったオレは、足首に巻かれたアンクレットを見つめていた。
身体を売るって。
あの西野君が、どうしてそんなこと……信じたくない気持ちと、学校外ではどこか大人びて見えた西野君の姿が頭に浮かんで心が締め付けられる。
好きな人だから、繋がりたいと思う。
オレは相手が雪夜さんだから、触れたくてひとつになりたいって思うけれど。その行為自体は、お互い愛がなくてもできるんだと言われているような気がして、オレは切なくなってしまった。
「……セイ、ごめん」
「どうして、弘樹が謝るの。この状況は、誰も悪くないでしょ?」
きっと。
心苦しく感じているのは、話を聞いただけのオレより当時者の弘樹の方なのに。西野君から直接事実を告げられ、その上告白までされているんじゃ、弘樹がこんな状態になっているのも納得がいく。
それでも、オレの問いに大きく首を横に振った弘樹は、ごめんと小さく謝罪をする。そうして、意を決したような表情をしてオレと向き合い、口を開いた。
「俺、西野と付き合ってんだよ。アイツを好きになれそうにないけど、こんな俺でも守りたいものがあるからさ」
「守りたいもの?好きじゃない相手と付き合うことで、守れるものなんてあるの?」
「……ソレは、言えない。でも、セイ以上に好きだって思えるヤツが俺にはいないんだよ。西野は……アイツは俺がどうにかするから、だからセイは、アイツに関わるな」
少しだけ、強い口調で言われてしまいオレは余計に戸惑ってしまう。
「弘樹……関わるなって言われても、どうしたらいいか分かんないよ」
「そうだよな……ごめん、セイ。だけどさ、俺はセイを傷つけたくないんだよ。でも、結局セイを傷つけてばっかで……今日もセイには、嫌な思いさせちまった」
「ううん、事情が分かったから大丈夫。でも、今の弘樹は弘樹らしくないよ。何を守りたいかは知らないけど、西野君といる弘樹は辛そうに見える」
あんな無表情な弘樹を見るのは、オレが辛い。見ているだけでも辛いんだから、当の本人からすればもっと胸が痛いはずなんだ。
「俺は別にいいんだよ、そんくらい」
「よくないよ。二人の付き合いだから、オレが言えることじゃないけど……このまま付き合っても、弘樹と西野君は辛いだけなんじゃないの?」
「んなこと分かってる。だからアイツには、告られた時に好きにはなれないと思うって言ってあるんだ。ただ、それでもいいから付き合ってほしいって……そしたら変われるからって、目の前で泣かれちゃ、俺でも断れねぇよ」
昔からモテていた弘樹は、女の子から告白される機会も多くて、いつも相手を傷つけぬよう上手に断っているイメージがあるのに。そんな弘樹でも、西野君からの告白は受け入れざるを得なかったんだとオレはこの時、そう思っていた。
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