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第483話
【雪夜side】
『あ、ユキちゃん?ひぃ君から連絡あった?』
「アイツ、お前んとこにも連絡したのか。バイト終わって、今から弘樹んとこ向かうとこだけど」
弘樹からクソ長い意味不明なLINEが送られてきたのは、ショップのバイト中のことだった。最後の文面に、会いたいですと残されたLINEに返信をし、どうやら似たような連絡を弘樹から受けていた光と通話しつつ、俺は車に乗り込み煙草を咥える。
『俺も今からダッシュで家帰るけど、とりあえずユキはひぃ君から詳しい話聞いといて。せいのフォローは俺がするから、ユキは番犬躾てきてくれる?』
「あー、分かった……星くん頼むわ」
『任せといて。じゃあね』
文字通りダッシュするんじゃねぇーかと思うくらい、急いで切られた光との通話。本当なら俺が星の傍にいてやりたいところだが、その前に俺はやらかしたバカ犬をどうにかしねぇーと。
そう思い、煙草を咥えたまま弘樹からのLINEをもう一度確認した俺は、ある程度話の内容を頭に入れ車を走らせた。
「わりぃー、待たせたな」
「いえ、わざわざスミマセン」
「直接、お前から話聞いた方がはぇーからいい。んで、星にはなんて伝えた?」
「西野に目の前で泣かれたから、仕方なく付き合うことになったって……けど、嘘はついてないッス」
弘樹の家の近くのファミレスまで足を運び、先に店内で待たせていた弘樹と合流して。
西野に告られた事実だけを星に伝え、その日のうちに俺に会って話がしたいとLINEを送ってきた弘樹は、事の詳細を話し出した。
クリスマスに、西野から告られたらしい弘樹。
そんなもんは正直どうでもいいが、西野の悪魔野郎にそののかされた弘樹からの話は聞き捨てならないものだった。
西野からデートに誘われた弘樹は、西野本人から身体を売っていた事実を告げられたらしい。それだけならよかったのだが、光の勘が見事に的中し、西野は弘樹と付き合うための囮として星を使ってきた。
「西野は……アイツ自身が男と関係持ってるから、セイが付き合ってんのは女じゃないってすぐに気づいたらしいです。セイが俺と仲良くしてんのも、最初から気に食わなかったみたいで」
純粋な星は、そんな西野の腹黒い感情のことなど気づきもせずに、今まで過ごしていたんだろう……項垂れていく弘樹は、気の毒だ。
「アイツ、俺が付き合わなかったらセイが男に抱かれてるって、学校中の奴らに言いふらしてやるからって……」
「仕方なく付き合うことにしたのも、お前なりに考えた上での選択っつーワケだな」
「ハイ……西野はまだ、セイの相手が本当に男だって証拠を何一つ掴めてないみたいですけど。でも噂が広まれば、ソレが例えデマだとしても、セイが傷つくのは目に見えてるじゃないッスか」
「お前の判断は、間違ってねぇーと思う。今頃光がお前の話聞いてパニクってる星を宥めてっから、お前は思ってるコト全部吐き出してから帰れ」
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