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第492話
光と話した日から数日が経過した今日は、金曜日。家に帰れば、愛する星くんが待っている日だ。
合鍵を持っている星から、学校帰りにそのまま俺の家に泊まりに来ると連絡があったのは、昨夜のこと。気にしている弘樹と西野の件で、ランからの連絡はまだ来ておらず、言われた通りに大人しく待っているのが、そろそろ限界を迎えそうなんだが。
それでも、星は今のところ大丈夫そうだと光からウザいくらい送られてくるLINEのおかげで、なんとか星に会える今日まで複雑な想いを抱えながらもやり過ごすことができている。
ただ、弘樹と西野の件に巻き込まれそうな星くんを、なるべく独りにさせたくはなくて。急いでバイト先から帰宅した俺が遭遇したのは、ソファーに腰掛け洗濯物をたたんでいる星くんだった。
「あ……おかえりなさい、雪夜さん」
帰ってきた俺を見てふわりと微笑んだ星は、たたみかけていたタオルをソファーにおき、スタスタと俺のところまで駆け寄ってくる。
「ただいま、星」
小さなカラダには不釣り合いな、ダボダボのスウェット姿。俺の寝間着をちゃっかり着込んで待っていてくれた可愛い恋人は、何も言わずに俺が脱いだマフラーとコートを俺の手から奪っていくと、当たり前のようにその二つをハンガーにかけてくれた。
「お疲れさまです。ご飯はできてますけど、お風呂があと5分くらいしないと沸かなくて……あ、あと洗濯っ」
過ぎる時間で寂しさを感じないよう、俺のいないあいだにさまざなな家事をこなしていたらしい星くん。至れり尽くせりで、俺の前で一生懸命話してくれているけれども。
弘樹から話を聞いてからというもの、ずっと心配していた星の姿が目の前にあって。星の手を引き、抱き寄せた俺は唇を塞いだ。
「んっ…ゆき、ぁ…」
久しぶり、おかえり、ただいま、ありがとう、愛してる……その全ての意味を含む口付けを星の唇に落としてやり、恥ずかしそうに頬を染める星くんに俺は笑いかける。
「あのっ……」
言葉が詰まって言い出せなくても、可愛がってくれと言わんばかりの星の表情に俺は思わずニヤけてしまった。
「家のこと、全部やってくれてありがとな。すげぇー助かるけど、無理はすんなよ?」
「無理なんて、そんな……オレがしたくて、やってることだから大丈夫です」
聞いてやりたいことや話したいことが沢山あるのにも関わらず、久しぶりに触れ合った俺たちはお互いに欲していて。
「……可愛すぎ、喰っていいか?」
笑い混じりに問いかけた俺の声に反応し、コクリと小さく頷いた星は、俺を見上げて抱き着いてきた。
「……雪夜さん、大好き」
心底安心しきった星の声で、告げられた言葉。
心配していたこともあってか、星が俺の腕の中にいることに安堵したのは俺も変わらない。
可愛らしい笑顔を見せて、今日も噛まれた俺の鎖骨。再び重なった唇を離す時には、潤んだ瞳が俺を迎えてくれるから。
今はただ、甘いキスに酔いしれていた。
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