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第493話
【星side】
「あっ…待って、待って、雪夜さん」
「ムリ、待たねぇー」
「ん…ぁ…でも、タオルがっ…」
大好きな雪夜さんの香りに包まれ、何度か深い口付けを繰り返して。潤んだ瞳で雪夜さんを見上げたオレは、スルリと服の中に入り込んできた雪夜さんの手を止めようと、雪夜さんの腕の中でもがいていた。
弘樹から西野君の話を聞いたあの日からずっと、オレはなんだかよく分からない不安な気持ちに襲われていて。
そんな不安を消し去りたくて、オレは雪夜さんに愛されてるんだって確かめるみたいに、今日は雪夜さんのスウェットを着て家事をしながら雪夜さんの帰りを待っていたんだけれど。
思いの外、雪夜さんの帰宅時間が早くって。
まだ全部たたみ終えていない洗濯物を指差し、待ってほしいと訴えたオレの手に指を絡めた雪夜さんは、軽々とオレを抱き上げベッドへ押し倒す。
「こんな可愛い格好して、俺にお預けくらわすつもりでいんの?もう俺、腹減って死にそうなんだけど」
クスっと笑われ、耳元でそう囁かれて。
オレ自らが、腹ぺこの狼さんに食べてほしいと望んだことを自覚する。本当に食べられてしまうんじゃないかと思うくらい、強く噛まれた耳にかかる吐息が熱くて、オレからは思わず声が漏れてしまう。
「やっ、ぁ…でもっ…」
「星」
オレを呼ぶ雪夜さんの声色が変わり、ドクンと高鳴った鼓動。親指でオレの唇をなぞった雪夜さんの指先が、ゆっくり顎へと下りてくる。
力は加わっていないのに、逸らしていたはずの視線は自動的に雪夜さんの瞳に捕えられて見つめ合った。それなのに、一瞬にして空気を変えた雪夜さんは何も言わずに微笑むだけで。
待てないと言った雪夜さんが待っててくれているのに、待てと言ったオレが待てなくなって唇を噛む。洗濯物なんてどうでもいいんじゃないかって、そんな思考ですら溶けてしまいそうな淡く甘い瞳。
キスだけじゃ、足りない。
本当は、もっと触れ合って雪夜さんを感じたい。 オレは、雪夜さんとひとつになりたいから。
「…もっと、して」
強請って欲しがれと、雪夜さんに教えられているオレの身体はオレが思っている以上に、素直な気持ちを口にしてしまった。
「いい子、星くん」
「んぁ…っ、ぅ」
一度強請ってしまえば、雪夜さんを欲しがるオレは貪欲に刺激を求めて疼いてしまうんだ。頭がクラクラするような優しくて甘いキスが段々と下へとやってきて、サイズがあっていない雪夜さんの服から覗くオレの肩に、柔らかな唇が触れた。
それと同時に雪夜さんの指で可愛がられている耳への刺激が、オレの頭を溶かしていく。
「んっ…ぁ、ゆき、や…」
耳のふちをなぞる指先の動きと這わされる舌の熱さに吐息が漏れ、名を呼んだオレは雪夜さんの髪に指を絡めて身体をぴくんと震わせる。
そんなオレの反応を楽しんでいる雪夜さんは、オレが着ているスウェットをたくしあげてニヤリと微笑み、その服の裾をオレの口まで持ってきて囁いた。
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