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第497話

雪夜さんと二人で過ごせる時間は、短い。 いっぱい触れ合って、いっぱいお話して……あっという間に過ぎてしまった時間を恋しく思いながら、オレはすっかり慣れた学校までの道を弘樹と一緒に歩いていく。 弘樹と西野君の関係を知り、不安を感じて戸惑っていたオレだけれど。弘樹が選んだことなら、やっぱりオレが口を挟むことじゃないんだろうなって思ったんだ。 雪夜さんに、たくさん話を聞いてもらったから。二人を見守ろうと決めたオレは、気怠げな親友に声を掛けた。 「お疲れだね、弘樹」 「……ねみぃ」 いつも週明け一発目は、うるさいほど元気な弘樹。西野君のことがあってからというもの、そんな元気な弘樹の姿を見ていなかったけれど。 元気がないというよりかは、ただの寝不足っぽい弘樹は、ふわぁーっと大きな欠伸をして横を歩いているオレを見る。 「夜中、ずっと西野の相手してたんだよ。アイツ体力あんだな、なかなか寝かしてくんねぇの」 「……弘樹、まさか西野君と泊まりじゃない、よね?」 「もう、セイちゃんのエッチ」 「いや、だって今の弘樹の言い方だとそう勘違いされても可笑しくないと思うんだけど」 弘樹に気持ちがなくても、付き合っているのならひょっとして泊まりなんじゃないかと、そう思った自分が恥ずかしい。 でも、少しだけ弘樹の表情が和らいだのは良かったかなって、自分の羞恥心を正当化しながらオレは弘樹の話を聞くことに集中する。 「俺は、あの人みたいに手出すの早くねぇからな。目立つ位置にキスマつけたりしねぇし、そもそも西野に興味ねぇし」 「いや、だからそれはその……って、オレの話はいいのっ!!」 「ごめん、ごめん。西野とは、通話でずーっとおしゃべりしてただけ。俺は適当に相槌しかうってねぇけど、それでも疲れるぜ」 「でも、そう思っててもちゃんと切らずに話聞いてあげるところが弘樹らしいや」 「俺、そのまま寝落ちしてスマホ充電すんの忘れててさ、朝から充電はねぇし、サブバッテリーも家に忘れてくるし……今日は、マジでついてねぇ」 今にも画面が真っ暗になりそうなスマホを見つめ、項垂れた様子でダラダラ歩いていく弘樹。そんな弘樹の姿であることを思い出したオレは、弘樹の肩に手を置いた。 「弘樹は双子座だからだよ、占いで双子座の今日の運勢最悪だったもん。確かね、今日の弘樹のラッキーカラーは黄色だったはず」 占いの情報を弘樹が信じてくれないことは、小さな頃から知っている。でも、ちょっとは気が紛れるんじゃないかと思い、そう言ったオレの言葉に弘樹は考え込んでいて。 「黄色の物なんて、持って……る、かも」 歩きながらガサゴソとエナメルバッグの中をあさり、何かを見つけ出した弘樹はニカッとはにかみ笑顔を見せる。 その弘樹の表情は、オレが久しぶりに見る人懐っこい弘樹らしい笑顔で。そんな弘樹の手に握られていたのは、雪夜さんから弘樹への誕生日プレゼントとして渡していた、ラッキーカラーが映える薄手のタオルマフラーだった。

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