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第502話

「貴方は、好んで孤独を望んでいたもの。雪夜は一匹狼でも、周りがほっとかないから……結局は、誰かがいつも貴方の側にいるんじゃないかしら。光ちゃんがいい例ね、なんだかんだ言いつつ、貴方の側にいたいって感じがするもの」 「光は、俺より優の側にいたいヤツだけどな。んで、学校側は西野をこれからどうしてくって?」 「とりあえず、今回の件については昌ちゃんだけで話をしていくみたい。売春していた決定的な証拠がない限りは、処分を決め兼ねるって。ただ、次に何か問題が起きた時には、学校側にきちんと話を通して退学処分になるんじゃないかって話だったわ」 「ふーん、あっそ」 俺から話を聞いておいて、この返事はどうなんだと自分でも思うが。興味ないヤツがどうなろうと、俺には関係ないという思考がそのまま応えになっていて。 灰皿に火種を押し付け、煙草の火を消した俺の姿を黙って見ていたランは、苦笑いを漏らす。 「雪夜ったら、興味ないのが丸分かりね」 本音を隠す相手でもないランに、わざわざ気など遣いたくない。西野なんかより俺は星が気掛かりで、側にいることのできない自分が情けなくてイヤになった。 学生という、立場や年齢をとっぱらって。 毎日二人で過ごせたなら、どれだけいいだろうと思う。この当たり前の日常の中では、星の僅かな異変に俺は気づいてやることができない。 今はまだ俺も学生で、一緒に暮らせるほどの経済力もない。星は高校生だし、アイツには描きたい夢がある。そして何より、世間一般的に考えるなら許された関係じゃないことも解っているつもりだ。 だからこそ。 使える人間は使って、こんなふうに見守ってやることしか俺にはできねぇーから。 ドラマや映画のようにはいかない俺たちの毎日は、実に平凡で。夢のまた夢を望みかけた俺は、煙草に火を点け現実を受け止めるしかなかった。 そんな俺の姿を見つめ、何処か慰めるように微笑んだランは静かに口を開く。 「雪夜、色々と思うところはあると思うけど……貴方にはあと一つ、伝えなきゃならないことがあるわ」 そう言われ、差し出された一枚のメモ用紙。 キレイに折りたたまれたソレは、ランの人差し指と中指で挟まれ俺の目の前までやってくる。煙草を持ったままの左手でその用紙を受け取った俺に、ランは話を続けた。 「西野って子が、どうやら貴方に直接会って謝罪をしたいそうなのよ。それには具体的な日時と待ち合わせ場所、その子の連絡先が書いてあるわ」 「ちょっと待て。西野が謝んなきゃならねぇー相手は俺じゃなくて星だ、ついでに弘樹もだな。俺関係ねぇーし、謝罪されたところで許すつもりねぇーぞ」 「でしょうね。会って本人に直接釘をさしても構わないし、会わずにその苛立ちを堪えても構わない。どちらを取っても、雪夜らしくはない選択になりそうだけど……会う会わないは、か貴方の自由よ」

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