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第507話

「青月くんには今までの僕の言動で、辛い思いをさせてしまったから。ちゃんと謝って、これからは友達として向き合っていこうって話になって」 一体コイツは、どの面下げて来たのだろうか。自分の行いを棚に上げ、よくまぁぬけぬけとこんな言葉を並べられるもんだ。 「お前は弘樹に言われなきゃ、人に謝ることもできねぇーのか。俺は関係ねぇーから、謝罪とかはどうでもいい。でも星は、アイツはちげぇーだろ。友達として向き合うとか、ふざけんのも大概にしろ」 「僕はっ……二人が、羨ましかった。目には見えない信頼関係があって、一度壊れかけた二人のその関係も気がついたら修復されていて。何度壊そうとしても、引き離そうとしても……信頼し合っている二人は、仲が良いままで」 西野は二人に壁を感じていたと、ランが言っていたのはこのことなんだろうが……それとこれとは、別だ。 「お前は、羨ましかったらソイツを殺すのか。羨ましいからナニしてもアリなんて、ガキにもほどがあんだろ。身勝手なその思いで、傷つくヤツの気持ち……考えてやれ」 自分が一番大事ってのは、誰だって心の何処かに隠された本心だとは思う。星と同じ孤独を抱えいていたのなら尚更、弘樹と星を羨ましく感じても仕方なかったのかもしれないけれど。 「僕は今まで、身体を使うことしか知らなかった。人を繋ぎ止めるためには、信頼関係よりもお金と身体がモノを云うんだって、ずっとそう思っていたんです」 愛を知らずに、育った西野。 身体で繋ぎ止めてきた、偽りの愛の行為。 光が言ってた通りのコイツは、人の優しさからずっと目を背けて生きてきたんだろう。 そんな西野の前に現れた星の存在は、眩しぎるくらいに羨ましく感じられたのかもしれない。嫉妬で狂ったコイツの思いを目の当たりにしても、星は揺らぐことなく弘樹と西野の傍にいたのだから。 「人を信じて傷つくくらいなら、最初から信じなきゃいい。愛を知りたいなら、この身体を差し出せばいい……弘樹くんからも青月くんからも信頼されている貴方には、僕の気持ちなんて分からないかもしれないですけど」 「お前の気持ちなんざ、分かりたくねぇーよ。結局、自分がヤバい目に遭うのを恐れた故の謝罪じゃねぇーか」 「それは違います、本当に違うんですっ!青月くんを囮に使ったのも、弘樹くんとどうしても付き合いたかったからで……僕、必死だったから」 「それであの二人傷つけてたら世話ねぇーだろ、ヤって金払って終わりじゃねぇーんだ。人付き合いなんてのは、そんな簡単なもんじゃねぇーってコトくらい、他人に言われなくても気づけや、クソガキ」 「……っ、すみません」 唇を噛み涙を堪える西野は、まだ一口も飲んでいないグラスを見つめ俯いてしまう。 コイツにもそれなりに、苦しく感じる過去があったことは理解してやるとしても。俺が可愛がっている二人を傷つけたことは、変えようのない事実だ。

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