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第514話

1日休んでしまったけれど、いつまでも休んでいるわけにはいかなくて。いつもと変わることなく、学校に向かうオレの足は重い。 「セイ、大丈夫か?」 「……大丈夫、ありがとう」 毎日迎えに来てくれる弘樹からの問いに、とりあえずオレは返事をしたものの。心ここにあらず状態のオレは、雪夜さんと西野君のことばかり考えていて。 オレの体調を心配してくれる弘樹の言葉も満足に受け取ることができずに、オレは見慣れた道を歩いていく。 オレが最後に見たこの道は、まだ雪が降っていて真っ白だったのに。二日のあいだで雪は溶けてなくなり、元通りの風景がオレの目に映る。 首に巻いてある雪夜さんがくれたマフラーで口元まで隠し、オレは弘樹の話を聞いているフリをしてその場をやり過ごした。 雪夜さんに、裏切れたなんて思わない。 もし仮に、雪夜さんがオレじゃくて西野君を選んだとしても。そこには、何かしらの理由があって……きっと、オレがあの場に居合わせてしまったことが悪いんだと思うから。 オレは、雪夜さんに甘えすぎているのかなとか。やっぱり、色気がある子の方がいいのかなとか……考えてもきりがないことを考えて、オレは溜め息をつく。 大丈夫だと思ったり、急に不安になったり。 それでも、西野君には何も訊かずにいようと決めているけれど。やっぱりどこか不安なオレは、今の自分を守るための、精一杯の防御作を弘樹に伝えることにしたんだ。 クラスで一人きりになるのはちょっぴり辛いけれど、今のオレには西野君の顔を長く見る時間の方が、きっともっと辛くなる。 そう思ったオレは弘樹の瞳を真っ直ぐ見つめて、どこか祈るように言葉を告げていく。 「ねぇ、弘樹……これからはさ、西野君と二人でお昼食べてあげてよ?」 オレが西野君に避けられたあの日のように、お願いだからオレを独りにしてほしい。何もなかったフリをして過ごせるように、オレも頑張るから。 「セイ、どうしたんだよ。やっぱ、俺がいると気まずい?」 「ううん、そうじゃない……けど、オレがいない方が西野君は弘樹とゆっくり話せるでしょ。西野君はっ……ひ、弘樹のことが好きなんだからさ!」 もしかしたら、違うのかもしれない。 どこで出会ったのかは分からないけれど、西野君は雪夜さんの方が好きなんじゃないかと……一瞬、思った心の声を抑えるのに必死で、オレの声は裏返ってしまった。 でも、弘樹にはそのことに気づいてほしくなくて。 「好きだから……西野君は、弘樹と一緒にいたいんだと思う。お弁当だって、毎日弘樹のために作ってきてくれるんだから。だから、二人で食べてあげて?」 いつもより早口でそう言ったオレに、弘樹からの返事はない。でも、こんなことは弘樹にしか頼めないから。黙ったままの弘樹に、オレは両手を合わせてぎゅっと目を閉じる。 「えっと、お願いします」 そう必死で頼み込むオレの姿を、弘樹は心配そうに見つめているだけだった。

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