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第527話
【星side】
雪夜さんと連絡も取らない、顔も合わせない日々が続き、気がつけば三月になって。
「せい、今夜は寝かせないから」
妖しく微笑みそう言った兄ちゃんを相手に、オレは困り果てていた。
雪夜さんと会った日に、オレは泣いてる姿を兄ちゃんに見られてしまい、雪夜さんとはもう会えないって兄ちゃんに言ってしまったのが一つの原因なんだけれど。
週末になっても家にいて、オレが泊まりに行かないのを兄ちゃんは心配してくれて。でも、オレが大丈夫だよって言っても、兄ちゃんは聞いてくれなくて……何日かは、大丈夫とはぐらかしていたものの。
土曜の夜の今日、オレは等々兄ちゃんに捕まってしまったんだ。
自室の部屋のベッドの上でちょこんと座っているオレは、腕を組んでオレを見る兄ちゃんに視線を向けることができない。そんなオレに兄ちゃんは、とっても優しい声で尋ねてきた。
「せーい、ユキちゃんの手料理、食べたくないの?」
「へ?あ……うん、食べたい」
質問されたことがオレの予想と大きく外れ、兄ちゃんの問いにオレは素直に答えてしまう。
「それなら、どうしてせいはユキに会えないの?」
「それはっ……」
今度は直球で訊かれ、オレは思わず言葉が詰まる。
本当は、会いたい。
雪夜さんが大好きな気持ちは、今でも変わらないから。でも、雪夜さんを傷つけてしまうのが怖くて、真実を知るのが怖くて。すべてを受け入れることができなかった、自分がイヤで。
あの時……雪夜さんを拒んでしまったオレは、雪夜さんに会いたいけど会えないでいるんだ。
雪夜さんになんて言ったらいいのか分からなくて、最後に会った日からオレは雪夜さんにLINEすることもできなくなってしまった。
気持ちはあるのに、行動に移せない。
本当は……オレだけの雪夜さんだと、今でも信じている。でも、西野君と雪夜さんが抱き合っていたように見えたあの日のことが、どうしても引っかかってしまう。
それにつけ加えて、オレは雪夜さんを拒んでしまったから。もうどうしたらいいのかオレは分からず、今のオレはさまざまな想いを精一杯塞ぎ込むことしかできなくなってしまった。
兄ちゃんからの質問にも上手く答えられないままのオレに、兄ちゃんは小さく息を吐く。
すると。
今度はさっきと違う言葉で、兄ちゃんはオレはにこう言った。
「せい、せいはユキが嫌い?」
「ううん、大好き」
呟くようにそう口にしたオレに、声色が変わらず優しい兄ちゃんは、オレの隣に腰掛けてポンポンと頭を撫でてくる。
「じゃあ、せいが大好きなユキに会いたいって言えるようになっちゃう、とっておきの魔法をかけてあげる」
「とっておきの、魔法?」
何言ってんだろう、兄ちゃん……なんて気持ちになることもなく、オレは王子様から魔法使いになったらしい兄ちゃんの言葉に、耳を傾けることにした。
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