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第533話

雪夜さんへのプレゼントを考えながら過ごしす日々が過ぎて、午前中だけの授業を受けるためにオレが向かった先は学校。 追試も補習もないオレにとっては、学校へ行っても正直何もやることがなく、ただボーッとしているだけの時間になっているけれど。 「……日直って、辛い」 今日は、月一程度で回ってくる日直当番の日で。朝から職員室まで出向き、担任の先生のディスクに置いてある実習ノートをクラスの人数分運ばなきゃならないオレは、自分の荷物とノートを抱えてヨタヨタと廊下を歩いていた。 同じ制服を着た知らない生徒とすれ違う廊下。 最初はなかなか慣れなかった高校生活も、そろそろ1年経とうとしている。それなりに、この学校に来て良かったな……なんて思いつつ、オレは荷物まみれで教室を目指す。 相変わらず、西野君とはろくに話をしないままのオレだけれど。オレの中で蟠りがなくなったら、西野君ともちゃんと話さなきゃって考えていたときだった。 「あっ!!」 長い廊下を歩き終えて、階段を上がろうとしたオレは正面からやってきた生徒に思い切りぶつかってしまう。その衝撃で、何冊かのノートを落として階段の踊り場でうずくまったオレは、ぶつかった相手に謝ろうと思い顔を上げた。 「っ、いってぇ……」 胸の辺りを押さえ小さな唸り声を漏らした相手は、オレと同じクラスの生徒で。 「あの、ごめんなさいっ!夏目君、大丈夫ですか?」 緩いパーマがかった明るめの髪の夏目 誠(なつめ まこと)君は、クラスの中でも一際目立つ存在だ。なんだか近寄り難い夏目君の左耳には、たくさんのピアスホールの一つに安全ピンが刺さっていて、いつも横島先生と言い争ってるちょっと怖い人。 そんな夏目君にぶつかってしまったオレは、落としたノートを拾いながらも夏目君に平謝りするけれど。 「フラフラしてた俺が悪いから、大丈夫……ってか、お前こそ大丈夫か?」 思っていた以上に優しい言葉を掛けられ戸惑うオレと、ノートを拾ってくれる夏目君。ボーッとしていたオレが悪いのに、クラスメイトの夏目君を朝から大惨事に付き合わせてしまった。 「だ、大丈夫ですっ!すみません、ありがとうございます」 「お前がケガしてねぇなら、良かった。ソレ貸せ、俺が持ってく」 「いや、でもっ」 「いいから、貸せっての」 ソレ、と指さされたノートをオレから無理矢理奪い取り、軽々と階段を上っていく夏目君の後をオレは慌てて追いかける。 「あ、えっと、待ってくださいっ!」 そんなオレの声に反応して、先に階段を上りきった夏目君の足が急に止まってしまい、急いで後を追っていたオレは夏目君の背中にぶつかった。 「ッ……ぁ、うわっ!!」 ぶつかった拍子に崩れた体勢、オレはまだ上りきっていない階段から確実に落ちると思ったその時。 「どんくせぇな、お前」 片手でノートを持ったまま、オレを抱きとめ支えてくれた夏目君はそう言って笑っていた。

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