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第541話
柔らかくて、ふわふわしてる雪夜さんの髪。
すべてを受け入れたいとか、色んなことを考えたけれど。こうして雪夜さんに触れることができる今が、幸せだと思えた。
ほんの少しの勇気を出せば、こんなに簡単にオレと雪夜さんの距離は縮んでいく。逸らされていた琥珀色の瞳が真っ直ぐにオレを見つめ、その瞳の中にはオレだけが映る。
「星、ありがとう」
ステラを抱えるオレの手に、ゆっくりと重なった雪夜さんの大きな手。一度は拒んでしまったけれど、オレは雪夜さんに抱きしめてほしくて。
「雪夜さん……ぎゅって、してほしい」
素直な気持ちを言葉にすると、雪夜さんはどこか緊張したような面持ちでオレの肩を抱いてくれた。
「……イヤじゃ、ねぇーか?」
「大丈夫です、嬉しいから」
その言葉で、雪夜さんはオレを抱く手に力を込めてくれる。ちょっとしたことですれ違ってしまったけれど、やっぱり雪夜さんが好きな気持ちは変わらないから。
雪夜さんの温もりを肌で感じて、やっと安心できたオレに、雪夜さんは振り絞るような声で呟いた。
「もう、このままお前を離したくない」
「雪夜さん……」
「すげぇー愛してんだ、だから俺の傍にいて」
「うん…ぅ、っ……」
オレは、本当に雪夜さんから愛されているんだ。そう強く思えたその言葉に溢れ出す涙を拭うこともせず、オレは何度も頷いた。
もう何も悲しくはないのに、苦しくもないのに。安心と嬉しさで泣いてしまうオレを、雪夜さんは包み込んでくれる。
この温もりを望んでいながら、オレは自ら遠ざけてしまったけれど。雪夜さんはオレの背中をゆっくり摩ってくれたり、頭を撫でてくれたりするんだ。
それがとてつなく心地良くて、オレの心を落ち着かせる。そうして、部屋に響くオレの啜り泣く声が恥ずかしく感じてきたころ、雪夜さんはオレから身体を離してオレのおでこに触れるだけのキスをしてくれた。
「可愛い」
だけどオレは、それが唇に落ちなかったことに少しだけ不満を感じてしまったから。
涙の跡を頬に残したまま、オレは雪夜さんの胸ぐらを軽く掴んで雪夜さんを引き寄せると、その唇に口づけた。
「んっ…」
優しくなくても構わないから、オレに触れてほしい。そんな思いを込めて、強引にオレから奪った雪夜さんの唇。でも、それはすぐに深くて甘いキスへと変わって。
「ぁ…ん、ゆきっ…」
重なっては離れていく雪夜さんの唇を追いかけているうちに、オレの膝の上にいたステラはラグへと落ちてしまう。けれど、今のオレと雪夜さんにはそんなことを気にしている余裕はなくて。
オレの髪を掴むように雪夜さんの片手で頭を抱え込まれ、オレはシャツを握っていた手を雪夜さんの首に回す。
縋るように伸ばした両手で、雪夜さんの襟足の髪をくしゃりと掴み、もうこれ以上離れることのないように……オレも雪夜さんもその想いを確かめ合うみたいに、お互いを求めていった。
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