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第543話
【雪夜side】
星が俺の腕の中にいることが、とてつもなく嬉しく感じる。話さなきゃならないことをお互いに打ち明けた後、俺と星の距離はなくなった。
偶然の出来事が、俺たち二人を苦しめていたけれど。西野のことも納得できた様子の星は、泣きながら笑って。もう一度、触れることを恐れた俺に、自ら触れてほしいと望んでくれた星と抱き合った後は、これまで以上に幸せな時間が訪れているから。
今は食事も終わり、ベッドの上。
オムライスを頬張る星くんはすげぇー可愛い笑顔を見せてくれたものの、全ての欲を満たした星は既に眠り姫で。
俺自身忘れていた誕生日を、一番に祝いたいからまだ起きていると言っていたのに。安心しきった表情で寝落ちてしまった星くんを、俺は起こす気になれずにいる。
あと一時間程度で、やってくるその日。
今までどうでもよかった誕生日だが、星が傍にいてくれるのなら俺は他に何もいらない。
もう、ダメかもしれないと思った。
星と連絡も取らない日々が続いて、もしかしたらそのまま一生会うこともできなくなるんじゃねぇーかとか考えて……けど、傷つけ合ったりすれ違ったって、俺が星を嫌いになることはどうしたってできねぇーから。
今はまだ小さな身体の星を抱きしめ、この先に広がる未来を楽しみに思ってみたりする。あわよくば10年後も今と同じように、何気ない幸せを星と二人で分かち合いたい。
俺が知らなかった、愛を教えてくれた星。
光が言っていたように、星は誰よりも優しくて強い心を持っているんだと思った。
そんな星が、俺を求めてくれる。
正直、それだけで充分過ぎるほどの愛を感じて。
これからも俺たちが乗り越えなきゃならない壁は、幾つもあるんだろうが……その日々も愛おしく思えるくらいに、俺はこの先も星だけを愛し続けるんだろう。
そんなことを思いながら艶やかな髪を撫でれば、星はふにゃりと愛らしい寝顔を見せてくれる。
「ほれはぁ、ぷれぇせんとれすぅ……」
「星?」
上手く聞き取ることのできない寝言を呟き、俺の胸に顔を埋めるなんとも可愛い俺の恋人。
きっと、明日の朝に目覚めたら。
なんで起こしてくれなかったんだと、俺は拗ねっ子星くんに怒られんだろうなぁ……って、んなこと思っても、こんなに幸せそうに寝られちゃ、起こすに起こせねぇーんだけど。
まぁ、いいか。
俺の産まれた時間でも教えて、明日は星くんのご機嫌取りから始めよう。日付が変わり、すぐに産まれたわけじゃないし。
誕生日を祝ってほしいから起きてくれ、なんて。アホな頼み事をするほど、俺は誕生日にこだわりはないから。祝いたいと言われた以上は起こすべき、とはやはり思えなかった。
誕生日云々よりも、俺は星とこうしていられることが一番の幸せだ。
できることなら、星が見ている夢と同じものが見られたらと思いつつ、瞼を閉じた俺は約1ヶ月ぶりに深い眠りに就くことができた。
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