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第546話

俺が知りたい答えを、なかなか言ってはくれない星。俯いたままの星にもう一度尋ねようかと思い、俺が煙草の火を消した時だった。 「……えっと、オレがプレゼント、です」 そう小さく呟いた星は、プイっとそっぽを向くと、パーカーの袖を引っ張りリボンを隠してしまうけれど。 「ちょっ…ん、ぁ…」 星くん自身がプレゼントなんて、美味しすぎる。頬を染め上げ俺から視線を逸らす星を抱き寄せ、俺はその唇を奪っていた。 さしずめ、光からの入れ知恵といったところだろうが……この際、そんなことはどうでもいい。 この小さなカラダも、心も、俺のモノ。 漏れる吐息も潤む瞳も、全てを捧げてくれる星が愛おしくて仕方ない。 マジで、このまま喰っちまいたい。 星がプレゼントなら俺はコイツにナニしてもいいワケだし……つーか、こんな可愛いことされて抑えられる男なんかいねぇーだろ、いねぇーよな。 「ゆきっ…ん、はぁ…」 交わすキスに流された星のカラダから、徐々に力が抜けていく。そのタイミングに合わせて、俺は星をソファーに押し倒し、手首に巻かれたリボンに口付け囁いた。 「最高のプレゼント、ありがと」 「雪夜さん…ぁ、やっ」 「イヤもダメも聞かねぇーっつーか、今日は聞いてやれねぇーよ。コレ、お前がプレゼントなんだろ?」 ピンク色のリボンに触れ、そこからゆっくりと指先を滑らせていく。 「そぅ、だけどっ」 「んじゃ、遠慮なく頂きマス」 俺の真下にあるプレゼント。 純粋で素直で、恥ずかしがり屋で俺を煽るのが上手く、感じやすくてすぐに泣いてしまう男の子。 その全てを味わいたくて。 誘うように背中を反らせ逃げ出そうとする星の耳に噛み付けば、その動きはピタリと止まるけれど。 「だめっ…まだ唐揚げ、んっ…作ってなぃ、からぁ」 甘い鳴き声混じりで、んなこと言われても。 こんなことになるくらいなら、やっぱ喰たいモノは星くんだって朝から公言しておけば良かった。 星はきっと、この先にすることを拒みたいワケじゃない。ただ、今日という日を自分の手で特別なものにしたくて。俺のために何かできることはないかと考え、その結果が手首に巻いたリボンなんだろう。 まさか、唐揚げを憎む日が訪れるとは思わなかったが。星くんなりに、精一杯誕生日を祝おうとしてくれてるその気持ちを、俺は無駄にできそうにねぇーから。 組み敷いたカラダを抱き上げて、膝の上に星を乗せた俺はあることを呟いた。 「……お願い?」 「そう、星が作った唐揚げ食いてぇーし、今は我慢すっけどその代わり……夜に、俺のお願い聞いて」 「分かりました。オレが雪夜さんのためにできることなら、何でもしますっ!」 嬉しそうに、ふわりと笑って星はそう言ってくれる。この愛らしい仔猫が、乱れていく姿を見たい。 俺はそんなことを思いながら、差し出されたプレゼントを強く抱きしめ、今日はもう気遣い無用で抱き潰してしまおうと決めた。

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