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第548話

さして好物なワケじゃなかった、鶏の唐揚げ。 でも、星が愛情込めて作ってくれたソレはすげぇー美味くて、家庭的な味の中に安らぎと幸せを感じた。 誕生日はケーキを食べなきゃダメだと言い張る星に合わせ、小さなホールのガトーショコラを二人で食べて。 豪華な品や、派手な飾りなんてもんはいらないんだと実感する。星の笑顔が隣にあって、二人でささやかな食卓を囲めるならそれでいい。むしろ俺には、そっちの方が贅沢な時間だった。 キッチンに立ち洗い物を片付ける星くんを、俺は背後から抱き締める。動きづらいとぼやきながらも、嬉しそうな星の首筋に顔を埋めてみると、俺と同じ香りがして頬が緩んでしまう。 「雪夜さん、くすぐったぃ」 「ああ、わりぃー」 そう口では謝りつつも、お預けくらってる状態の俺は既に我慢の限界で。 メシ食う前に一緒に風呂入った時だって、俺はすげぇー頑張って無自覚な星くんの色気に必死で耐えたってのに。これ以上我慢なんぞできるワケもなく、俺は星の首筋を舐め上げていた。 「だめっ…」 「もう無理」 星には悪いが、今日くらい俺のワガママに付き合ってほしい。三連休の残り2日、その日にバイトが入らなかったなんて、こんな奇跡はそうそうないワケで。 そうなれば必然的に、俺の願いなんてもんは決まってくる。長い夜は、まだ始まったばかりだから。 「っ、ぁ…ちょっと」 身じろぐ星の両手をシンクに押さえつけ、大きめのスウェットから覗く愛らしい肩に赤い痕を残す。それだけでピクンっと反応する星は、持っていた布巾を握る手に力を込めた。 「星、俺のお願い聞いてくれんだろ?」 もう断る理由も何もない星にそう囁けば、小さな頭がコクリと動くけれど。 「ちゃんと聞くっ…から、やめっ」 「ヤダ、聞いてくれんならやめる必要ねぇーもん」 「え?……じゃあ、雪夜さんのお願いってなに?」 ……ここまでされて分かんねぇーっつーのは、もうある種の才能だな。 大抵のヤツなら勘づくであろうことでも、本当に分かっていないらしい星くんは、背後から抱き着いている俺を見上げて不思議そうに尋ねてくる。 その仕草が余計に俺のいたずら心を刺激するとも露知らず、俺からのキスを受け入れた星は熱い吐息を漏らして。 「ゆき…んっ、ッ…」 触れるだけの柔らかな口付けを何度か繰り返し、押さえつけた星の手に指を絡めると、少しだけ強ばっていた星のカラダから力が抜けていく。 おまけとばかりに一度唇を離して俺が微笑んでやれば、今度は星自ら俺の首に腕を回して物欲しそうな顔をした。 頭では分かっていなくても、星のカラダは優秀だ。男なら誰でも持っているであろう下心には気づかないクセに、純粋な瞳で俺を捕らえる星くんが求めているのは、これからする淫らな行為。 もちろん、互いに愛を表すためではあるが。 何も知らないような顔をして、本能的にソレを感じ取る恋人に、俺は魅了されていくばかりだ。

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