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第549話

風呂に入る前に、外したピンクのリボン。 ソレをもう一度、星の手首に巻きなおして。ベッドに腰掛けた俺の脚の間で、跪く星の髪を撫でる。 「…んっ、雪夜さん」 潤みきった瞳を向けて、俺を呼ぶ星くんはもう既に蕩けている。星の感じやすい耳を可愛がり倒して、それだけで達してしまいそうなカラダに、もどかしく感じるくらいの淡い刺激を与えてやった後だから。 そんな星に、俺がお願いしたコト。 普段受け身な星くんに、俺がさせる行為といったら一つだけ。 艷めく星の唇をなぞり、軽く開いたソコに指を滑り込ませた俺は、今ある精一杯の優しさを含んで微笑みつつ、星の咥内を撫で回した。 「んぅ、ふぁ…っ」 身包み剥がしたカラダが冷えぬように、素肌の上から羽織らせた俺のジップアップのパーカーを握り、星は切なげに片目を瞑る。こんだけでも、充分可愛い反応をする星くん。 ……ただ、俺が咥えさせたいのは指じゃねぇーんだよ。 そのことを星も理解しているからか、物足りないといった表情で星は俺を見つめてくる。熱い吐息が触れる指を星の咥内から名残惜しく抜きとり、銀色の糸を引くソレを俺は迷わず口に含んだ。 「あのっ…」 「ナニ?」 「恥ずかしいこと、しないで…」 「お前、今からもっと恥ずかしいコトすんのに?」 「それはっ」 口篭った星の瞳に、ニヤけた顔の男が映る。 もう優しくはできないと、そう感じざるを得ないその表情は俺自身のものだ。 「なんでも、シてくれんだろ……それとも、やっぱやめとくか?」 「ううん……オレ、ずっと雪夜さんのこと気持ちよくしてあげたいって思ってたから、だからやめないですよ?」 俺の中に存在する優しさの欠片が奪わてしまう前に、俺は星に最後の確認をとった。すると、星は小さく首を横に振ったのだ。 「……あの、でも、上手にできなかったらごめんなさい。オレ、その……っ、ん…はぁっ」 上手いとか、下手とか、そんなもんはどうでもいいけれど。上目遣いで俺を見る星が愛おしくて、俺は星の唇にキスを落としていく。 「それは、こっちのセリフ。たぶんすげぇー苦しいと思うから、無理だと思ったらすぐに教えて」 ……やめてやれる自信、ねぇーけどな。 赤く染まるこの可愛い口で咥えられたら、俺は歯止めが効かないだろうから。おそらく、理性がなくなるのは俺の方で。普段は比較的抑えている欲が、ここぞとばかりに出てしまうと思う。 けれど、今日は俺の誕生日だから。 俺の言葉にゆっくりと頷いた星は、俺の願いを叶えてくれる。 「星」 低く名を呼んでやるだけで、星はごくんと喉を鳴らした。それが合図となり、躊躇せずに星くん自ら俺のモノにキスをする。 「んっ…はぁ、ぅ…」 実は過去に何度か、俺は星から口でしてみたいと申し出を受けていたけれど。自分でも薄々気づいている欲の塊に、星を巻き込むのは気が引けて……適当にはぐらかしながら、俺は今日までやり過ごしてきた。

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