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第561話
【星side】
部屋の窓から見える桜。
暖かな春の風を感じる、四月の始め。
たくさんの歳月を経て、オレは高校三年生になりました。
雪夜さんとは今まで通りの関係で、今日は二人でお花見に出かける予定。
この桜の木を眺めていると過ぎた時間を懐かしく感じて、二年生のときのことを思い出したりするけれど。
これと言って特に大きな変化はなく、兄ちゃんと優さんは相変わらず仲良しだったり、たまに四人で遊んだり。大学四年生になった雪夜さんは、ショップのバイトよりもコーチのバイトの方が増え、忙しいけど充実した毎日を送っている。そんな雪夜さんを見ることができて、オレはとっても幸せ。
あ、でも。
オレの周りで変わったことと言えば、弘樹と西野君が本格的に付き合い始めたこと。
一年生の終わりは、関係がギクシャクしてたオレたちだったけれど。弘樹が西野君の強い気持ちに負けて、今は秘密の交際中だったりするみたい。
と言っても、進展があるようでほとんどない二人は、新たな悩みを抱えているらしく、オレはそんな親友たちの相談役を務めている。
そういえば、オレは誠君と健史君ともよく話すようになっているんだ。教室内では話さない二人だけど、息抜きがてらオレが一人で屋上に行くと、言い合いしてじゃれ合ってる二人はいつも優しくオレを迎えてくれる。
過ぎた時間を巻き戻すことなんてできないけれど、一日一日が過去になっていき、その積み重ねで今のオレがいるんだ。
その日々は色とりどりの思い出になって、オレの心に刻まれていく。それはきっと、これからも変わることはなくて。
「あ、雪夜さんだ」
桜の木の下に停まった、一台の車。
約束の時間より早めに迎えに来てくれる雪夜さんは、車から降りると煙草を吸ってオレを待っていてくれる。
「こんちは、星くん」
今日はまだ、一本目の煙草。
甘く香るブルーベリーの匂いを想像しながら大好きな人の元へと駆け寄れば、縮まった身長差を感じる。オレもそれなりに成長して、一年生のときよりかは雪夜さんの目線に近くなっていた。
それでもまだまだ雪夜さんの方が背が高くて、オレが雪夜さんを見上げるのは前と一緒だから。雪夜さんの近くまでオレが近づけば、雪夜さんはオレ手を軽く引いて、ポンポンと頭を撫でてくれる。
「お迎えありがとうございます、雪夜さん」
明るいうちの挨拶は、ここまでだけれど。
夜に迎えに来てくれるときは、オレを抱きしめておでこにキスをするのを忘れない雪夜さん。
正確に言うと、そこまでしないとオレを車に乗せてくれないんだけどね。
「さーてと、デートしに行くとすっか」
醸し出す気怠さはそのままに、大人げな雰囲気が増した雪夜さんは、落ち着きと優しさが外見からも溢れ出ていてオレはドキドキしてしまう。
どんなときでもなにを着てても、やっぱりカッコイイ雪夜さんを独り占めできることが、オレはとても嬉しかった。
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