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第566話

【雪夜side】 桜を見たら雨が降る、なんて。 俺は、そんなジンクスでも持っているんだろうか。 星と出逢って、3日目だったあの日。 あの時と同じように、今日雨が降るなんて思っていなかった。どうやら俺は、雨男らしいが……過去を振り返ると、そんなことより俺の最低さを自覚してしまうから嫌になる。 出逢って1日目でキスをして、2日目が未遂で終わり、3日目で持ち帰って抜いてやるヤツが何処にいんだよ、と。 なんて、此処にいることを忘れてはいけない。そして、その最低さは今もさして変わりないということを。 ……ただ、できればそこは突っ込んでほしくねぇーなぁって思う。だってな、星くんもう蕩けてっから。 「んぁ…ッ、やぁっ」 「星、静かに」 鳴くように仕向けてんのは俺だが、声を我慢している星を見るのもイイ。ぎゅっと目を瞑り唇を噛んで、淡い刺激に耐えるその姿はすげぇー可愛いから。 「でも…耳、ばっか…やだぁ」 「んじゃ、何処がいいか言ってみろ」 寸止めされて、お預けくらうのはもう慣れた。 だから今日だって、無理とかバカとか言われると思っていたのに。むしろ、そう言って抵抗してくれたら、俺も少しは大人しくできたかもしれない。 けれど。 星はあの時と変わらず、俺を求めてくれて。 俺もあの時と変わらずに、星の望み通りにしてやっている。 ただ、あの時とは違うこともあって。 この先を知らなかった過去と、この先を知っている今では、今後の展開が大きく変わってくんだよ。 ココ、車の中。 スグそこ、外。 さて、問題デス。 あの時の俺は、どうやってこの衝動を抑えたんでしょーか……って、知ってるヤツがいんなら今の俺に教えてくれ。 男とか、女とか。 そんなしがらみなく、愛し合えること。すぐに蕩けてしまうカラダも、溺れていくような感覚も。その全ては、俺が星に教え込んだものだ。 俺だけを求め、星が乱れ縋り付いてくるように。甘く淫らな姿を見せてほしいと望む俺の欲に、星はきちんと応えてくれる。 「もっと…色んなとこ、触って」 色んなとこ、か。 何処とは言えないけれど、星がもっと気持ち良くなりたいことは理解できる言葉に笑みが漏れてしまう。 「噛んでもいいから、声出さねぇーって約束な」 できない約束をさせようとする俺は、相変わらず悪いヤツだと自分でも思うが。 「…ん、がんばる」 きっと、我慢できないのは星も同じだから。 この車が飛鳥のお古で、本当に良かったと思った。ヤリ目のためかは知らないが、スモーク加工されているこの車は外から中が見えにくい。 ロックもかけたし、必要なもんは揃ってる。 滅多に人が通らない道、この雨の中なら揺れる車も気にはならないだろう。上がっていく体温は車内に熱を篭らせ、外との温度差でガラスを曇らせていくし。 どうする……なんて考えていた過去の俺は存在しねぇーから。そんなもん、このままヤるに決まってんだろ。

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