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第570話

「はぁ…アァっ、やらぁ…やッ」 猿轡代わりだったものがなくなり、声を上げて鳴いてしまう星くんが可愛らしい。そんな星のナカに埋まる指を引き抜き、俺は喘ぎ声が漏れる唇をキスで塞ぎつつ、自身のモノに手早くゴムを被せていく。 俺の服を星がどれだけ汚しても構わないが、最低限のエチケットは必要だ。 「ん、ゆきっ…ぁ、ん…ンっ」 目を瞑り、長い睫毛を震わせて。 より深いキスを強請る星くんは、俺の首に腕を回して縋りついてくるけれど。もう一度、この愛らしい唇に口付けるその時は、ひとつになった状態で愛を確かめたいから。 俺は名残惜しい気持ちを抑えて唇を離すと、星の頭を撫でてやり、仔猫が好きな笑顔で微笑んでやった。 「雪夜ぁ…さ、んっ…好き、好きぃ…」 「ん、俺もお前が好き。星、腰上げてみ?……そう、上手。そのままこいよ、ゆっくり腰下ろせ」 「んぁっ、はぁ…コレぇ、だめッ」 「ダメなワケねぇーじゃん、お前が一番好きな繋がり方だろ、星くんいい子……ッ、全部入った」 壁一枚あるのとないのじゃ、やっぱ感覚は全然違うけれど。星んナカにいるのは変わらないし、何よりこうして抱き合えることが幸せだと思えた。 それは星も同様なのか、事に及ぶ前に交わした約束を守りきれずに、星は甘く淫らな吐息を漏らす。 「ひゃぁッ、ん…ァっ、はぁ…」 俺が動かなくても星が腰を下ろすだけで、簡単に奥まで辿り着けるこの体位は星くんのお気に入り。本人はそんなことを考える余裕もなく、いつも泣きじゃくって乱れまくっているけれど。 星の腰に巻いてやったジャケットの裾から片手を忍ばせ、星くんの仙骨辺りをくすぐるように撫でてやれば、それだけでナカの締め付けが強くなる。 「…ッ、逃げんなよ」 「でもっ、アぁッ…ん、ゆきぃ…やっ」 溺れそうな快楽から逃れようとする細い腰を支えてやり、星の弱いところを突いてやると、星は喘ぎ混じりの可愛い鳴き声で俺の名を呼んでくれる。 けれど俺は、それが嬉しくもあり、同時に苦しくもあった。誰にも聞かせたくない声、見せたくない表情をして俺に縋る星。この場に及んで今更訪れた独占欲は、もうどうしようもないけれど。 「星、鎖骨噛んどけ……お前のコト、もっと感じてぇーから」 誰に聞かれるか見られるか分からないこんな場所で、俺だけを求める星を愛してやりたいとも思うから。 「ん、んぅ…っ、はぁ…」 「ッ、星…すげぇーイイ」 痛みが快感に変わる、とまではならないが。噛まれることに慣れた俺のカラダは、その痛みを感じることによって安堵感が増していく。 車内に充満するローションの桃の香り、外の雨音に混ざり聞こえる星の息遣いと、俺たち二人が繋がっている音。夢中でお互いを求め合って、もうどうにでもなれと俺の口元が緩んだ時。 俺たちは再び交わした口付けから、言葉じゃ伝えきれない愛を感じ取っていた。

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