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第581話
「不純じゃなくても、事実だろ。でも、よく続くよなぁ……あんだけ遊んでた白石が、今じゃ仔猫ちゃん一筋で、学校まで送り届けちゃうとか笑える」
仔猫送ってから、こっち来るって。
ここに来る前に俺が康介にそうLINEしたからか、気持ち悪い笑みを漏らして俺を見つめる康介。
俺がどんな週末を過ごそうが、どうやってここまで来ようが、この男には関係のないことだ。
「勝手に笑っとけ。お前にどう思われようと、んなコトどーでもいいし」
心底どうでもいいと思いつつ、冷めた声で呟いた俺に、康介は寂しそうに言葉を発する。
「白石ぃ、そこは変わらねぇのな。もう四年も一緒にいんだからさ、もうちょい俺に興味持ってくれてもよくね?」
用もない大学まで康介のためにわざわざ来てやっているのに、これ以上興味を持てと言われてもウザいだけだ。
「充分過ぎるくらい、構ってやってんだろ。誰のせいで、こんな朝から用もねぇーのに大学来てると思ってやがる」
「俺、白石のそういうとこ好き。でも私生活充実してるお前は嫌いっつーか、憎たらしい」
確かにコイツと出会った一年の頃と比べたら、今の俺は充実した日々を送っているのかもしれない。
もしも星と出逢うことなく、あのまま何にも興味を示すものもなく、過ごしていたなら。諦めた夢をもう一度、追いかけてみようとは思わなかっただろう。
寄ってきた女と、適当にセックスして。
愛されることも愛することも知らずに、自分に何の価値もないことを感じながら、ただなんとなく過ごす毎日。
嬉しいとか、楽しいとか。
幸せだとか……そういった類いの感情もないまま、自分が生きている理由とかを時々無駄に考えて。それもすぐに飽きてしまい、結局また、同じ毎日の繰り返し。
そんな過去の俺と比較したら、そりゃあ今の方が充実してて当たり前だと思った。
俺の悪戯が過ぎ、熱を出しても。
今の俺には、心配して怒ってくれる恋人がいる。朝目覚めたらキスをして、おはようと笑い合える日常こそが幸せなんだと。
そう俺に教えてくれた、星がいるから。
愛しい仔猫のことを思うと、自然と頬が緩んでしまうけれど。
「……白石のその顔、ホントに嫌い」
目の前にいる康介は、相変わらずバカだった。
「殺すぞ、康介」
「だって、しょうがねぇじゃん!幸せオーラ出しやがって、これ以上イケメンに磨きかけんじゃねぇっ、俺が更に惨めになんだろッ!?」
「お前が惨めなのは、今に始まったことじゃねぇーだろ。なんでもかんでも他人のせいにすんな、もう子供じゃねぇーんだから」
「……ゴメンナサイ。その通りすぎて、なにも言えません」
「単位も、卒業も、就活も……全部、お前の行いの結果だろ。俺も仔猫もそうだけど、俺ら一緒にいるときも勉強したりするからな。お前が思ってる以上に、お互い真面目な付き合いしてんだよ」
星と一緒に過ごしているからといって、遊び呆けているわけじゃない。サボりのツケが回ってきた醜い男に、俺はそう忠告した。
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