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第591話
自分の家のより寛げる、雪夜さんの部屋。
今日は換気がしてあって、澄んだ空気が部屋全体に広がっている。
宿題をして、洗濯物を取り込んで。
自分の部屋着に着替える前に、オレは雪夜さんのプラティクスシャツを着て遊んでみたりした。
オレが着ると、相変わらずサイズが大きい雪夜さんの服。サラサラ素材のシャツは、コーチの時に雪夜さんが着ている服だけれど。デザインもオシャレなものばかりが揃っていて、オレは雪夜さんのセンスを羨ましく思ってしまう。
でも、こんなにセンスがあるのに雪夜さんは画伯だから。この間、レポート用紙に連携の取り方を図にしていた時も、棒人間がボールに串刺しになっていたのをオレは知っている。
それが地獄絵図にしか見えなくて、オレが指摘したら拗ねてしまった雪夜さんはとっても可愛かった。あの時は結局、言い合いしながらオレが雪夜さんのイメージを聞いて、図を描き直したりしたんだ。
雪夜さんといると、どんなことでも楽しい思い出になるから不思議だ。西野君のことですれ違ってしまったことも、今では二人にとっていい経験ができたんだと思えるようになっている。
雪夜さんと付き合い始めて、2年が過ぎたけれど。西野君の一件以来、オレと雪夜さんの間で大きなすれ違いはなく、お互いを思いやりながら信頼関係を築けているように思う。
「オレが着るとワンピースなのは変わらないね、ステラ……オレが小さいんじゃなくて、雪夜さんが大きいだけなんだから」
ちっせぇーな、お前って。
雪夜さんはオレを抱き締めて、よくそう言って笑うけれど。雪夜さんが人より背が高いだけだと、オレは思っているから。
雪夜さんには言えない言い訳を、ステラに聞いてもらって。自分のいいようにステラの返事を解釈したオレは、もうちょっとこのままでいようと思った。
この部屋で待ちぼうけするのは、嫌いじゃない。ここで待っていれば、雪夜さんは帰ってきてくれる。雪夜さんのお家だから、当たり前のことだけど……でも、自分の部屋より居心地がよくて。
いつでも食べられるように、今日の夕飯はカレーを作ったり。今日の放課後、横島先生に言われたことを考えながら、オレは過ぎる時間を持て余す。
「……ご飯、どうしよう」
お腹は空いているはずなのに。
窓の外が真っ暗になっても、オレは独りで食事をする気にはなれなかった。
今日の雪夜さんの帰宅時間は遅い。
先輩のコーチから食事に誘われたらしい雪夜さんは、家で待ってるオレを心配して連絡を入れてくれたけれど。
ご飯もお風呂も一緒がよかったなって思いつつ、オレは食事はせずにシャワーだけ済ませると、広く感じるソファーに腰掛けた。
日付が変わる前には、帰ってきてほしい。
付き合いも大事だって、それなりに分かっているつもりだから。だからオレは独りで寂しくないように、イヤフォンで好きな音楽を聴いたりして、大好きな雪夜さんの帰りを大人しく待っていた。
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