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第599話

暖かい陽射しが部屋の中に入り込んで、眠っていたオレの瞼を照らす。それが眩しくて目を開ければ、オレの隣で幸せそうな顔をして、ぐっすり寝ている雪夜さんの姿があった。 雪夜さんの可愛い寝顔に、オレは癒されていく。オレより大人でかっこいい雪夜さんだけれど、雪夜さんを知れば知るほど、この人のこういった愛らしさに惹かれてしまうんだ。 ここ数日の間、まともな睡眠もとらずに過ごしていたらしい雪夜さん。安心しきった表情はやっぱりどこか幼くて、少しだけ開いた口元が微笑む。 もしかしたら、夢でも見ているのかも。 どんな夢を見ているのか気になって、雪夜さんが見ている夢に、オレが出てきていたらいいのになって思ったりしながら、オレは雪夜さんの寝顔を眺めている。 雪夜さんの涙を思い出し、息ができないくらいに苦しく感じた昨日を振り返って。生きていくために泣いたり笑ったり、寄り添っては離れてを繰り返して、二人の絆は深まっていくと思うから。 これは、オレ達が強くなるために。 神様が与えてくれた試練なのかな、なんて。 そんなことを考え、オレは雪夜さんを起こさないようにゆっくり暖かな腕の中に潜り込んでみた。 腰が痛い、喉が痛い……色々、痛い。 雪夜さんはオレのこと気遣って抱いてくれるけれど、いつもオレが雪夜さんにもっとしてほしいと強請るから。 結局、オレの身体はキャパオーバーして次の日に痛い目をみることになるんだ。だけど、身体に感じる痛みがこんなにも愛しく思えるのは、別れの日がくるからなのかもしれない。 その別れが雪夜さんの大きな一歩になるのなら、それも幸せだと思える日がくるように。今はこの腕の中で、傍にいられる幸せを噛み締める。 朝方からいっぱいえっちなことをしちゃったから、今日はどこにもお出かけできないけれど。もし明日の天気が良かったら、デートしてほしいって雪夜さんにお願いしよう。 ドライブに連れてってもらって。 広い公園とか、のんびりできる場所で、晴れた青空の下を雪夜さんと一緒に歩くんだ。 手は繋げないから雪夜さんの服の裾を握って、歩幅を合わせてくれる雪夜さんを見上げながら、今日も大好きだなって思ったりして。 特別じゃない日々が、特別に変わっていくことを実感したい。雪夜さんと少しの間離れてしまう前に、小さな幸せを沢山味わっておきたいから。 明日の予定を一人で組み立てて、オレの頬が緩む。そんなオレのことなんか、眠っている雪夜さんは気づかないはずなのに。雪夜さんの腕の中で一人微笑んだオレを、雪夜さんはぎゅっと抱き締めてくる。 またいつもの狸寝入りなのかなって思ったけれど、気持ち良さそうな寝息を立てて眠る雪夜さんは起きているとは思えなくて。 今、雪夜さんが見ている夢と同じものが見れたらなって。オレはそんな有り得ないことを願いながら、暖かな心地良さを感じ、そっと瞳を閉じていった。

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