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第604話

「だからね、明日学校で会ったら西野君に誤解だよって言ってあげればいいんだと思う……え?あ、うん……今は雪夜さんが、ご飯作ってくれてるもん」 星と一緒に、公園から帰宅して。 俺が晩飯の支度をしている今、星は弘樹とLINE通話でお喋りの真っ最中だ。 「弘樹は西野君と、そういうことしたいとは思わないの?まだ早いって言うけど、オレなんて雪夜さんと初めて会ったその日に……いや、なんでもない」 おい、コラ。 星くん、口滑らせ過ぎてんだろ。 ベッドの上でステラを抱き、弘樹と話してる星の声はキッチンで料理をしていても俺の耳に入ってくる。親友同士、仲良くやっているのは感心するが……これじゃ悩み相談じゃなく、ただの暴露大会だと俺は思ってしまった。 チェリーボーイ二人組のハズなのに、意見が食い違っている弘樹と星くんのやり取りを聞きつつ、俺は一人で笑いを堪えている。 「弘樹がそんなこと言ってるから、西野君が泣いちゃうんだよ。西野君が全部分かってるならさ、もう西野君に身を任せてみればいいじゃん」 立場上、ソレは弘樹のプライドが傷つく。 星の意見はご最もではあるが、そうできないから弘樹は弘樹なりに悩んでることを理解してやってほしい。 男として、弘樹にはリードしたい気持ちもあるんだろう。相手も男だし、ハードルが高いと感じてしまう弘樹の気持ちも理解はできる。 好きな相手となら、愛し合えることは間違いじゃないのだが……自分勝手に突っ込むのはご法度だし、なんなら気遣うことの方が多い行為だ。 相手がしっかりと快楽に溺れられるように、一つ一つ反応を見ながら次に進む余裕なんてもんを、童貞の男に求める方が間違いだけども。 そんなことを思いつつ、晩飯の下準備を終わらせた俺は星を抱き締める。 「雪夜さん、弘樹をどうにかしてくださいっ!」 俺の腕の中にちゃっかり埋まりつつ、星は俺にスマホを突き出してきて。俺はそれを受け取り、星の頭を軽く撫でて電話越しの弘樹に話し掛けた。 「うちの可愛い星くんにお説教されてる弘樹クン、お前ホントにバカだな」 『あ、白石さん……お疲れっス。スミマセン、二人でいる時に連絡しちゃって……』 「ある程度の事情は、星から聞いた。とりあえず明日、西野に謝って誤解といてやれ。それと、お前の気持ちは汲んでやる。だから焦んな、いいな?」 『ハイ……でも悠希のヤツすげぇ積極的で、俺がしっかりしなきゃいけないのに、どうすりゃいいのか分かんなくて。俺、セックスなんてしたことねぇし』 「まぁ、誰だって最初はそんなもんだろ。お前がしっかりしてなくても相手が経験豊富なら、楽なもんなんじゃねぇーの」 『ソレ言っちゃいますか、白石さん鬼っス……セイは白石さん一人のモノっスけど、悠希は、アイツはっ、知らないオヤジ達と散々……あー、俺もうダメだぁーッ』 「うっせぇーよ、お前さっき俺が言ったコト聞いてたか?落ち着け、バカ犬が」

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