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第605話

『落ち着きたくても、落ち着けないっス……悠希泣かせちゃったし、セイには説教されるし』 「ってかさ、お前はなんで西野と付き合ってんだ。星はもう関係ねぇーし、お前は西野の野郎のどこが好きなんだよ?」 弘樹と西野の付き合いは、西野の威しから始まった関係だったハズだ。星を囮に使って弘樹に近づいた西野に、弘樹が惹かれたキッカケってもんはあったんだろうか。 正直、俺にはどうでもいいし、二人の関係に全く興味はないけれど。弘樹をどうにかしてほしいと星くんから頼まれた以上、弘樹の話をある程度聞いてやる必要はある。 それに、俺は半年間海外生活で、星とも離れなきゃならないから。今のうちに弘樹には、しっかりしといてもらいたいところではあるんだが。 『最初は興味なかったし、嫌なヤツだと思ってました。でも、それは俺がセイを守りたかったからで。俺が、勝手に悠希のことを悪者扱いしてたんッスよね』 「まぁ、あんなコトあったら誰だってそう思うだろうな……んで、それが好きに変わった理由は?」 『片想いの辛さは俺も分かるから、目線を変えて悠希自身を見てみようと思ったんです。今でもセイは俺にとって、親友として特別な存在だってことも悠希は理解してて。アイツは、本当に俺のことを好きでいてくれてんだなって実感したんっスよ。悠希は悠希で、誰にも言えない悩みがあったりとかして』 年相応の恋愛をしている弘樹と、カラダだけは経験豊富な西野。ネコとタチが逆なら、俺と星のようなものなのだが。 「ふーん、そんで付き合ったのはいいけど抱ける気がしねぇーってコトか。青春お疲れさん、だな」 弘樹の話を聞いている俺は、抱き締めている星くんに指を噛まれて頬が緩む。星とのやり取りが弘樹には聞こえないように、俺はスマホを一旦耳から離して星の耳元で囁いた。 「せーいくん、好き」 「……ん、むぅ」 弘樹をどうにかしろと言っておきながら、構ってほしいアピールをして、俺の指に噛みついて遊んでいる仔猫が可愛くて仕方ない。 強めに噛んでは口を離し、噛み痕を眺めた後に赤い舌を覗かせ、傷を癒すように俺の指をちろっと舐めてを繰り返す星くん。 この愛らしい仔猫と戯れてやりたいところだが、弘樹の話も聞かなかきゃならない俺は、星に指を噛ませたままスマホから聞こえてくる弘樹の声に耳を傾けた。 『俺、別に男が好きなわけじゃねぇし……でも悠希は俺との繋がりを求めて必死になってくれて、それはすげぇ可愛いなって思うし。愛とかよく分かんないっスけど、セイとはまた違う魅力がアイツにはあるんです』 「そう思うならカラダが全てじゃねぇーって、お前が西野の野郎に教えてやりゃいいだけの話じゃねぇーか。付き合い方なんてそれぞれちげぇーんだし、焦るコトねぇーだろ」 『そうっスよね、やっぱ白石さん神様っスッ!!あ、お邪魔してスミマセンでした。ありがとうございましたッ!!』

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