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第618話

【雪夜side】 「弘樹、これで少しは気持ちの整理ついたか?」 朝から弘樹の意味不明な電話で起こされた俺は、ラインの謎を解きつつ、弘樹と星がいる公園まで車をぶっ飛ばした。 その後は登校中の二人に起った出来事を知り、俺はとりあえず弘樹に合わせた行動を取ったが。なんだかんだしているうちに、時間は過ぎてしまって。 とてもじゃないが星も弘樹もこのまま学校へ向かわせることはできなかったため、弘樹に学校へ連絡を入れさせ、今日は二人とも仮病を使い休ませたけれど。 今は俺が運転する車内で、星が助手席でブランケットに包まり眠りに就き、そんな星には言えない思いが溢れた弘樹は、後部座席で泣いている。 「俺、やっぱセイが好きで……俺が悠希を抱けないのは、まだセイが好きだからなんじゃねぇかって……ホントは心のどっかで、ずっとそう思ってて……」 星の前で堪えていた涙を流し、俺には本音を語る弘樹。星と西野のあいだで揺れる恋心を隠して、このままじゃダメだと感じていたのは弘樹自身なんだろう。 「お前がそう簡単に星を諦めらんねぇーのも、中途半端に西野と付き合ってんのも知ってる。だから俺がいなくなる前に、自分の気持ちをはっきりさせたかった……そんなとこだろ?」 弘樹はルームミラー越しで、俺の問いに小さく頷いた。 今日は、バイトもなければ講義もない。 忙しい日々の中で、ようやく訪れたオフの時間。弘樹を家まで送り届け、その後は仔猫の躾に勤しもうと思っていたのだが。 俺の隣で眠る星くんは当分起きそうにないし、一丁前に俺を信頼してくれたバカ犬をどうにかしてやりたくて。俺は弘樹の話を聞いてやるため、考えていた予定を立て直した。 星が起きる頃には着いているであろう場所まで、俺はドライブがてら車を走らせる。安心しきった星くんの穏やかな寝息と、弘樹のしょんぼりボイス。今の俺には、その二つがBGMだった。 「セイにはカッコつけて、白石さんとセイのためって感じにしましたけど。実際は、セイに俺の気持ち言い当てられちまったから……なんか自分が情けなくなって、それであんなことしちゃって」 少し開けた窓から、流れていく紫煙。 微かに香り始めた甘い匂いに、眠っている星の頬が緩む。 「うちの星くん、お前になんつったんだよ?」 星が言った言葉が気になり、俺は弘樹にそう尋ねた。 「セイは押し倒せるのに、悠希にはできないんだって。俺、セイからそうやって言われたんっスよね」 あー、星くん……コイツ、女王降臨させたのか。この仔猫はまったく、幼馴染みの弘樹には強気でものを言う癖、どうにかなんねぇーかな。 俺の前にも極たまに出現する、星の女王様タイム。発生イベントのフラグ立ちが、どのタイミングで成されているのかは今のところ不明だが。 星の中で、光と似たような妖艶さが顔を覗かせる時。高確率で遭遇するのは、かなり強気で自信に溢れ、相手に有無を言わせない謎の圧がある女王様気質の星くんだ。

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