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第626話

「ところで、お二人さん。弘樹の頬が緩みっぱなしで、ある程度のことは聞かなくても分かるけど……その、告白はどうだったの?」 オレの話は、いいとして。 オレが気になっていたことを二人に訊いてみると、弘樹はデレデレ笑っていて、西野君が顔を赤く染めて話し出す。 「弘樹くんがね、夜景が綺麗に見える展望台に連れてってくれたの。すっごくロマンチックで、僕ホントに嬉しかったよっ!」 弘樹が夜景を見に行くなんて、やっぱり想像出来ないけれど。雪夜さんが弘樹にこっそり教えた夜景が見えるスポットは、雪夜さんのお兄さん、飛鳥さんが女性と一夜を過ごす時に使っていた場所だって、雪夜さんがオレに教えてくれた。 弘樹が西野君にサプライズするなら、ちょっと大人ぶって背伸びしても大丈夫だからって。そんな裏情報を知っているオレだけれど、幸せそうに笑う二人を見て、良かったなって思ったんだ。 「弘樹くん、私服だとイメージがぐっと大人っぽくなるから、なんかドキドキしちゃって……あ、でも制服姿ももちろん好きだからね?」 「悠希ぃー、お前ホント可愛いっ!」 それにしても、ラブラブってこういう雰囲気のことをいうんだろう。オレがいても関係なく、二人だけの世界に入り込む弘樹と西野君。 イチャイチャする二人は、今のオレにはとても眩しく感じて。雪夜さんと昨日会ったばかりだから、まだ心細いとは思わないけれど……でも、ちょっとだけ羨ましいなって思ったことは内緒だ。 無意識に触れていた、首筋の痕。 この痕がいつまでも消えなきゃいいのにって考えていたオレを見つめ、抱き着いてくる弘樹を引き剥がしながら、西野君はオレに声を掛けてくる。 「青月くんの彼さん、もうすぐ海外行っちゃうんだっけ……当日は、空港まで見送りに行くの?」 西野君にそう尋ねられ、オレはゆっくりと首を振って否定する。 「ううん、行かない。雪夜さんが日本を経つ日は平日だし、研修は一人じゃないから……オレが見送りに行ったら、色々と迷惑かけちゃうもん」 「あー、そっかぁ……」 できることならギリギリまで一緒にいたいけれど、現実はそうも言っていられない。 「それにね、いつも通りさよならするつもりでいるんだ。半年会えなくなるからって、最後の最後まで一緒にいたら、オレ……行かないでって、本音を言っちゃいそうで」 本当は、雪夜さんに傍にいてほしい。 弘樹と西野君みたいに、オレも雪夜さんと同じ時間を過ごしていたい。 でも。 「セイ、あとちょっと頑張れよ。離れてからはもっと辛くなるかもしんないけど、今は笑顔で送り出すコトだけを考えた方がいい」 「うん、分かってる。オレは大丈夫だから、二人はそのまま仲良くね?」 いつまで大丈夫と言っていられるか分からないけれど、大丈夫だと思うしかないから。励ましてくれる弘樹と西野君が、これから先もっと仲良くなれるように。 今のオレは、そう願うのみだった。

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