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第635話

蕩け始めた星くんは、俺のキスに応えて舌を絡ませてくる。御世辞にも上手いとは言えないものだが、それも俺を煽っていることに星は気づいていないらしい。 最初にキスした時は、息をすんのも下手くそで。苦しそうに眉を寄せていた星に合わせ、何回か唇を離し呼吸を整えさせてやったりしていたけれど。 「ッ、ん…はぁっ」 少しずつ成長していく仔猫さんは、俺が離れると寂しそうに追いかけてくるから。可愛い星くんが酸欠状態にならぬように、俺はゆっくり星の唇を味わった。 「ゆきっ、ン…やぁ」 「星」 本当なら、会えなくなる半年分のキスをして。 抱き締めてやりたいし、繋がっていたい。 けれど、そこまで激しく求めてしまったら星のカラダがもたないから。初めてヤった時くらいに時間を掛け、俺は星の反応を隅々まで楽しみながら星に触れていく。 「耳、だめ…っ、ぁ」 指先に力は入れず、肌に滑らすように撫でるだけ。耳の輪郭に中指と人差し指を沿らせ、付け根から首筋へと俺の手は移動する。 それだけで、星のカラダはこの先の刺激を待ち望む。手のひら全体でやんわりと首を嬲りつつ、小指で鎖骨を掠めてやると。 「ぁ…っ、ん、やだっ」 淡い刺激に耐えられない星は、早くも可愛く鳴き始めた。そのまま仔猫の頭を抱え込み、俺は星の反応に満足しながら微笑んで。 「知ってる、だから触ってんの。俺のコト、お前に沢山感じてもらいてぇーから」 お互いの額をコツンと合わせ、想いを通じ合わせるように素直な気持ちを言葉で伝える。俺に余裕があるワケじゃないが、今日は焦ることなく星を感じたい。 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、星はとろんと蕩けた表情で俺を見つめてくる。 「ん…雪夜、さん…好き」 そう呟いて微笑んだ星の瞳から、静かに零れた涙。 強請って、泣いて、縋ってほしい。 いつもなら、この涙は俺にそう感じさせるのに。離れてしまう寂しさを実感する星の涙に、切なさが募り胸が苦しかった。 「星、愛してる」 「うん…ッ、ん…」 俺の言葉に何度も頷き、星は俺の背中に腕を回して抱き着いてくる。星が流す涙が俺の首筋をつたって、今日はもうこのまま泣かせてやろうと思った。 二人で決めたワケじゃないのに、寂しいと口にしなくなった星。それは互いのためであり、自分自身のため。言えない想いが溢れてくるなら、泣いたままでも構わない……生理的に流れる涙として、俺は受け止めてやるだけの話だ。 だから今は、我慢せずに泣いてほしい。 繋がって離れた後、精一杯の強がりで俺のために微笑んでくれる星がいるのを俺は分かっているから。 「ぁんっ…ッ、ん…はぁっ」 耳に口付け甘噛みし、空いた片手で星の涙を拭う。頬から首を通って鎖骨を撫で上げ、俺の手が下へとおりていく度、星のカラダに力が入っては抜けていく。 「可愛い、星くん」 「いっぱい、可愛がっ…ぁ、て…」 「もちろん…ってか、最初からそのつもり」

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