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第704話
俺は、どうやって眠りに就いたのだろう。
明らかに水分不足なカラダ、目覚めてすぐにスマホをチェックし時間を確認したけれど。そんなふうに考えてしまうほど、久しぶりの深い睡魔に襲われていた俺は、夕方から次の日の昼まで眠り続けていたらしい。
「……乾涸びて、死にそ」
掠れた声で呟いたのはいいものの、俺は水分補給の前に星くんからのLINEを既読する。ベッドに転がったまま、左手でスマホを操作して。
まだ重い瞼を半分くらい開けるのがやっとの俺は、星から送れてきていた内容を読み進めながら瞳を閉じていった。
「雪君、起きてすぐに寝落ちしていますが……大丈夫ですか?まだ寝てても構いませんが、とりあえず水分だけは取った方がいいですよ」
俺が夢の世界に入りかけた時、竜崎さんの声が聴こえて再び目を開けたけれど。視界に飛び込んできたのは、ミネラルウォーターのボトルと、結構な至近距離で俺を見て微笑む竜崎さんの笑顔だった。
「あ、スミマセン……ってか、おはようございます」
……とりあえず挨拶しねぇーと、つーか煙草吸いてぇー。
そんなことを思いつつ、俺は竜崎さんから差し出されたボトルを受け取り上体を起こして、一気に体内へと水分を流し込んだ。
「雪君、落ち着きましたか?」
「……はい、ありがとうございます」
すっかり軽くなったボトルを握りそう呟いた俺は、まだ寝起きでボーッとする頭を軽く左右に振った。そんな俺の姿を見て竜崎さんはクスッと笑う。
「雪君、後はご自由にどうぞ」
そう言い残して、竜崎さんは自身のベッドに移動してしまった。竜崎さんのこの優しさが、嬉しくもあり心苦しくも感じる。本来なら、もっとしかり感謝の意を伝えるべきなのだろうが……俺はとりあえず、星くんからのLINEを返信するためスマホに目をやった。
可愛い星くんは、夏休みを俺の家で過ごしているらしい。部屋の換気もしてるし、ステラにキスもしているって。進路のことはまだ悩んでいるけれど、焦らず考えると。あとは、この前、光と優の二人に連れられてランの店にも行ってきたと。
さまざまな出来事を報告してくれる星は、今日も俺を愛してくれんだって実感して頬が緩んでいく。
でも。
可愛い可愛い星くんが、光だけじゃなく優と三人で行動をしたことが気にかかり、俺は星に返事を送った後、ベッドから抜け出しつつ優に連絡を入れた。
肝心なことを隠す光と、ある程度は聞いたら答えてくれる優。どちらに連絡を入れれば、俺が知りたい情報を得ることができるのか。
この場合なら、光より優の方が話をしやすい。
そう考え、俺は部屋から出る身支度を整えていく。熟睡したこともあり、身体はやけに軽く感じるが、頭はまだ冴えないまま。
このタイミングで、文字じゃなく会話で話ができればいいのだが……俺はそんな小さな祈りをなんちゃって仏教徒の優に捧げつつ、煙草を吸うため部屋から出て行った。
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