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第744話
絡まる舌と、濡れた唇。
伝えてやりたいことは沢山あるのに、止まらない衝動は抑えが効かない。
それは星も同じなのか、俺の首に回していた腕をクロスさせて。更に深く溶け合えるようにカラダを密着させてくる仔猫さんからは、鼻に抜けた甘い声が漏れていく。
「ッ、ん…はぁっ」
「星」
俺が一旦唇を離して名を呼んでやれば、閉じられていた瞼が開き、潤んだ瞳が姿を見せる。そこに映し出されているのは俺だけで、どうしようもない独占欲が満たされていくのを感じた。
「雪夜さん、もっと…」
煽っている気はないんだろうが、この無自覚な煽りに心を奪われてしまう。それはもう、苦しく感じるほどに。
「好き、だからぁ…もっと、可愛がって…」
鼻先が触れ合う距離で、離れた唇を追いかけてくる星はそう言って次を強請ってくる。
大事にしてやりたいのに、壊したくて仕方ない。離れていた分を取り返すように、俺だけに見せる表情で泣いて、乱れていく星を愛したい。
「あんま煽んなよ、どうなってもしらねぇーぞ」
けれど……俺に余裕なんて、ないから。
そのことを知ってほしいような、永遠に知らないままでいてほしいような感覚だけは、どうか伝わることのないようにと願いながら、俺は星とキスを交わす。
「んっ、ゆき…やぁ」
「……可愛い」
すげぇー可愛くて、愛しくて、止まらない。
玄関先からこのソファーまでの距離を耐え抜いたお互いの理性を、褒めてやりたいとさえ思ってしまうくらいに。キスだけで俺を感じて、力が抜けていく星のカラダはよくこの半年間を我慢したと思う。
艶のある黒髪に触れ、ソレに隠れた耳に触れて。静かな部屋に響く星の声は、とても愛らしい鳴き声へと変化する。重ね合わせた唇を甘噛みし、星くんの弱い上顎なぞった後は、舌先を優しく包んだりして。
「んん…ンっ、は…んぁッ」
欲望も、優しさも。
どれだけ俺が焦る思いを感じていようと、優先すべき相手は星だから。星に合わせて加減しつつ、俺は柔らかく触れ合う唇の感触を味わっていく。
「すげぇー感じてんね、お前」
「ぁっ、ん…ッ、もぅ…」
小さなカラダを震わせ、俺に縋り付く星くん。
俺の首筋に当たる冷たい金属製のものは、星の左腕に巻かれた時計で。その存在を小さく主張しつつ、同じ時を刻んでいる今を感じさせてくれるけど。
「も…ムリぃっ」
我慢の限界を越えている星のカラダは、淡い刺激にすら敏感に反応してしまうから。モゾモゾと俺の上で腰を揺らす仔猫さんは、蕩けた表情で俺を見つめてきて。
「はぇーな、だから言ってやったのに……まだキスしかしてねぇーだろ、星くん?」
可愛くて、可愛くて。
星の頭を撫でてやりながら思わずそう呟いた俺の表情は、おそらく緩みきっているんだろうと思う。
「ねぇ…雪夜さん、脱がして、ほしい」
耳元で小さく聴こえた仔猫さんからの要望は、星がもう限界なことを意味する言葉で。この制服を脱がしてしまえば、俺が愛してやまない仔猫さんの理性は完全に崩壊する。
そう確信した俺は、緩んだ頬を更に緩ませ星をベッドへと押し倒した。
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