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第755話

【雪夜side】 どうして、分かったのだろう。 柊についての詳しい話を、俺は星にしていないのに。それなのに言い当てた星は、何処か得意気な顔をして笑っていた。 人に興味がなかったはずの俺を、変えたのはお前だと。人への有り難みも、愛することを教えてくれたのは星なんだと。そう心の中で思っていても、上手い言葉が見つからず、俺は無言で星くんの頭を撫でるだけだった。 甘えるだけじゃダメだと呟いていた星は、ゆっくり瞳を閉じて。甘えきった表情をしながら、俺の膝の上で眠りに就いていく。 久々に散々ヤったカラダは相当体力を奪われているだろうし、安心して眠りにつけるならこのまま寝かせてやろうと思った俺は、星くんの可愛い寝顔をただ眺めるだけで幸せを感じた。 支え合える関係を望んでいる星くんだが、コイツは俺に支えて貰ってばかりいると勘違いしているのだと思う。支えられているのはいつだって俺の方で、この小さな手を離したくはないと思ってしまうから。 「半年、本当によく頑張ったな」 星には届かない言葉は、そっくりそのまま俺の元に返ってくる。愛しい相手が傍にいる幸せ、触れ合って、なんてことない日々を過ごせる安心感は計り知れないほどに俺の胸を打つ。 俺がいない間、きっとコイツはたくさん泣いたんだろう。 寂しい思いを堪えて、会いたい気持ちを必死に押し殺して。そうやって、ずっとここで待っていてくれたんだと思うと、愛おしさを通り越したよく分からない感情が俺を包んでいった。 「星、すげぇー愛してる」 答えるわけがない星にそう呟いてみれば、気持ち良さそうに眠っている仔猫さんからは、ふにゃりと愛らしい笑顔という名の返事が返ってきて。 星が泣くのはすげぇー可愛く思えんのに、俺が泣くのは違う気がして。笑った星の表情につられ、俺からも笑みが漏れていった。 苦しいわけでもなく、悲しいわけでもない。 辛いわけでもなく、切ないわけでもない。 どちらかと言えば、幸せ過ぎて怖いんだろうと。今までなら感じることのない、小さな小さな幸せにすら感動してしまうくらいに。 お前がいるなら、それだけでいいと。 離れて気づいた僅かな幸せに、心が大きく揺れていく。星に会えたことが、最後じゃないから。これからを俺はどうやって生きていけばいいんだろうかと、そう感じて手に取ったスマホには、優からの連絡が残ったままだ。 帰ってきたら、話がしたい。 あの時から結局、変わることのないらしい友人二人の関係は、亀裂が入った状態で。 動き出した時間は、どうやっても止められないものなんだと。そう感じた俺は落ち着こうと思い、煙草の箱に手を伸ばした。 愛用品のジッポは、やはりとても手に馴染む。この重さも、オイルの香りも。感じていなかったのは、たかが半年足らずなのに……ものすごく懐かしく感じてしまうのは、星に預けていった物だからなのかもしれない。

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