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第816話
お日様の光に照らされている中庭で、外でも風が吹いてない今はポカポカとして温かい。そんな場所に居座り、三人で話している内容はオレと雪夜さんのことについてだった。
「セイもあの人といると顔変わるけどさ、こうして見るとあの人も大概だよな。なーんかすっげぇ幸せそう、最高の寝顔撮れて良かったんじゃねぇの……ってことで、コレ返す」
オレだけの雪夜さんを覗き見てしまった弘樹は、少しだけ罰の悪そうな顔をしていて。オレの手から奪ったスマホを差し出してきた弘樹は、最後の言葉にごめんなって一言付け加えてくれた。
「それにしても、彼さんが帰国して早々慌ただしいというか、家出なんて青月くんらしくないことしたね。まぁ、もう気持ちも落ち着いてるなら大丈夫なんだろうけど」
「実際問題、男同士で付き合ってるって簡単に話せることじゃねぇもん。それが親相手なら尚更だろ……俺たちだってこの先隠し通していくのか、どうすんのかって話になってくし」
「学生のうちは、まだ……って、オレも雪夜さんも思ってたんだけど。でもなんかね、不安っていうか、現実を突きつけられる日常を目にするのが怖くなっちゃって」
何でも話せる二人にだからこそ、本心を隠さずに言えるこの関係がとてもありがたい。男同士の付き合いに立ちはだかる壁が大きいことも、この二人はよく分かっているから。
昨日の家出の話や、オレが母さんへ雪夜さんの話をしようと思っていること。色んなことを友達同士で話して、弘樹と西野君からもオレは勇気をもらったんだ。
「真面目なセイが家出とか、母ちゃんはともかく父ちゃんが怒るってか凹みそうだよな。セイの父ちゃんって、優しい人じゃん?俺が泊まりに行っても、すげぇ親切にしてくれるしさ」
「ああ、二人とも幼馴染みだもんね。お互いの親のことも、よく知ってて当然か……でも怒るより凹むって、青月くんのお父さんはそんなにナイーブな人なの?」
弘樹の呟きに、西野君がすかさずそう返して。
仲のいいカップルを眺めながら自分の親のことを考えてみたオレは、くにゃんっと首を傾げた。
「んー、よく分かんない。でもオレはどちらかというと父さん似で、兄ちゃんが母さん似……かな。これは内面の話だけど、うちは母さんの方がしっかりしてる気がする」
「あーでも、確かに亭主関白って感じじゃねぇよな。愛妻家?とりあえず、セイの両親が仲良しなのはバカな俺が見ても分かるレベルだぜ?」
「……そっかぁ、うちとは正反対だ。家族ってさ、本当にその家によって違うんだなぁって思うね。うちの親なんて僕に興味ないから、そこはある意味感謝かも」
弘樹の肩に頭を乗せ、呟いた西野君はしみじみと語り瞳を閉じる。親と向き合わなきゃならない時間は刻一刻と迫り、そのうち鳴るチャイムが響くまで、オレたちは三人で話し続けていた。
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