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第828話

「ゆきっ、ん…ぁ」 柔らかなキスをし、俺だけを感じてほしくて求めていくカラダは深く繋がり合うことを望む。 頭では、分かっていること。 星は、コイツは俺だけのモノだって。 分かっているのに、止められない感情は抑えることが出来そうになかった。 絡まるような口付けを交わし、行き場のない星の両手を頭の上へと押さえ付けて。不安そうに眉を寄せた星の瞳を覗き込んだ俺は、悪ガキ地味た笑顔を見せ口を開く。 「証明してみせろ、お前が欲しがんのは俺だけだって。この身体全部使って、俺だけを愛して」 「雪夜、さん……もしかして、あのっ」 俺の心に落ちた、モヤッとした黒い影。 その感情の正体を大きな瞳に映した星は、何かを確信したのか小さく笑って俺に問い掛けてくるけれど。 「もしかしねぇーでも光に妬いてることくらい気づけ、お前の前にいんのは俺だ。他の誰のことも考えなんな、頼むから……頼むからさ、もう二度と別れるなんて言うんじゃねぇーよ」 嫉妬だとは、思っていなかった。 光に嫉妬しても、何にもならないことは分かっていたから。星の光への思いは、恋や愛ではない。 分かっている、分かっているのに。 例え、一瞬でも。 星が俺より光を選んだことが、今更になって酷く癇に障る。俺だけ見てほしいなんて女々しい感情を、俺はそのまま声に出して星に伝えてしまうが。 「雪夜さんは、おバカさんですね。オレの身も心も、いつだって雪夜さんだけのモノです。だから、そんなに可愛い顔しないでくれませんか?」 「あ?」 そう言って俺を見上げ笑う星は、いつもより少し男らしく感じて。押し倒しているのは俺のハズなのに、今日は何処となく雰囲気が違っていた。 「今の雪夜さんは、仔犬さんになってます。不安にさせちゃって、ごめんなさい……でもオレ、雪夜さんだけを愛してるので。その、身体で証明出来るならいくらでもしますよ?」 恥ずかしげもなくサラっと恥ずかしいことを言ってのけた星は、俺の変化していく表情を楽しんでいて。 「雪夜さんだって、オレが欲しいんでしょ?オレだって、雪夜さんとひとつになりたいです。雪夜さんしか辿り着くことの出来ないところで、オレは雪夜さんを感じたい」 「……お前、男前過ぎんだろ」 火の点ついたイタズラ心は、星の言葉によって恥と照れが入り混じった生暖かいものに変わり、俺は照れ隠しのために星を押さえ付けていた手の力を緩めた。そして、その腕で俺は顔を隠すように俯いていくけれど。 「雪夜さんが、照れてくれるのが可愛くて。その顔がもっと見たいなって思ったら、勝手に口が動いちゃうんですもん。だから、ほら……ね?」 広げられ、差し出された両手は俺の首へと回り、星は下から俺に抱き着いて。 「……きてください、オレのナカに」 甘く誘うようなその声に、俺は理性を手放していった。

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