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第830話

メダイユへの願いが決まり、クリスマスイヴ前日になった今日。雪夜さんはお昼からコーチのバイトに出掛けてしまい、オレは部屋に独りきり。 考え事もひと通り落ち着いて、気持ちの整理を終えたオレは、忘れていた大事なことに気づき、新たに頭を悩ませている。 「んー、どうしよう」 その悩みとは、雪夜さんへのクリスマスプレゼントがまだ決まっていないことで。雪夜さんが帰国してからというもの、色々あり過ぎて眼中になかったプレゼントの存在を今日になって思い出したオレは、こうしちゃいられないと慌ただしく家を飛び出した。 少しの腰の痛みを気にしている暇はなく、オレは駅前の百貨店へとやってきたけれど。 雪夜さんと付き合って最初のクリスマスで、お互いに同じプレゼントをあげたことから、オレと雪夜さんのクリスマスプレゼントは、お互いに同じ物を贈り合うことに決めている。 1年目がマフラーで、2年目がベルト、そして3年目になる今年のプレゼントは。 「キーケース、かぁ……」 プレゼントする物は二人で話し合って決めていても、そのデザインまでは指定がなく、お互いにお互いのことを想い選ぶのがクリスマスプレゼントだから。 お目当てのキーケースに出逢えることを祈りつつ、百貨店内をうろうろと彷徨いていたオレは、とても良さそうなお店を発見した。 少し格式が漂うお店に足を踏み入れるのは勇気がいるけれど、シックな革製の商品が陳列されているこのお店の物は、雪夜さんにとてもよく似合う気がして。 店内にいる他のお客さんに紛れ込むように、オレはそっと目的の物を探すために動き出していく。 「……ここのロゴ、星のマークがあるんだ」 バッグやお財布、さまざまな商品が並んでいるのを見てそう呟いたオレは、その中のひとつを手に取って。 「オシャレ……え、でもお値段……あ、ウソ。意外とリーズナブルだ、うん、よし」 一目惚れでもしたんじゃないかと思うほど、オレは雪夜さんにぴったりのキーケースを見つけた。値札を確認し、その値には見えない黒のキーケースをオレは手から離さない。 迷うことなくレジへと歩みを進め、クリスマスのラッピングをしてもらっているあいだ、オレはお店の店員さんと少しだけ話をしたんだ。 使うほどに味が出る革製のキーケースは、二つのゴールドのボタンがあしらわれていて。ワンポイントのロゴには、星のマークを囲うようにブランド名がついているから。 きっと、プレゼントされた方は喜んでくれますよって。お世辞かもしれないけれど、店員さんのその言葉をとても嬉しく思ったオレは、深くお礼を言って何事もなかったように雪夜さんのお家へと帰っていった。 ソワソワする気持ちを抑えてなるべく平然を繕い、今日の夜もオレは雪夜さんと伴に過ごして。慌ただしく過ぎていった1日は、あっという間に終わりを迎えていたんだ。

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