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第862話
「話に花が咲いたら、父さんと雪夜さんが仲良くしてくれているなら……それなら、オレも嬉しいけど。でも、やっぱりちょっと心配かも」
何がどう心配なのかは、オレ自身よく分かっていないけれど。今日初めて顔を合わせた二人が密室にいるって考えると、オレの心は落ち着かない。
挨拶をしたときは、雪夜さんと父さんだけがちゃんと真面目な態度で話をしていたから。目上の父さんに合わせ、雪夜さんからすんなり出てくる敬語の数々に、オレは尊敬の念を抱いたけれど。
「そんなに心配なら、二階に行ってきたらどうかしら。たぶん星の部屋で話していると思うから、母さんが呼んでるとか適当に理由つけて様子を見に行ってらっしゃい」
ソワソワしているオレの姿に呆れたのか、母さんはそう言うとオレの身体をリビングの扉までズイズイと押していく。
「父さんだけ部屋から追い出して、あとは少しの間雪夜君と二人でゆっくりしてくるのよ?」
「え、でも……」
母さんは簡単に言ってくれるけれど、結構大変なミッションなんじゃないかと思い、オレはなかなか頷くことができない。父さんを追い出せば、雪夜さんとイチャつけるからって……そんな顔をしてオレを見る母さんの笑顔は、少しだけ怖くって。
「星、分かった?」
念を押すかのように満面の笑みでそう言った母さんは、最後にリビングの扉まで開けてくれた。ここまでされて行かないとは言えなくて、オレは渋々階段を上っていくしかなかったんだけれど。
「……すっげぇー、可愛いっスね」
「そうだろう、この頃のあの子たちは本当に天使だったんだ。こう見ると幸咲も老けたな、今でも美人なのは変わらないが」
自室の扉の前。
小さく聞こえてきた声は、とても楽しそうな二人の話し声だった。
さっきまで心配していた自分が、なんだかバカみたいに思えて、オレは急に恥ずかしくなる。でも、雪夜さんも父さんも和やかな声のトーンだったから……心配していた分、安心もした。
けれど。
安心したら中の様子が気になって、気になって、堪らなくなってきたオレは、自分の部屋の扉をノックするとガチャっと中へ足を進める。
そして。
「……ちょっ、え!」
オレの予想を遥かに超えた二人は、オレのベッドの上で胡座をかいて、いくつものアルバムを広げ笑っていた。
「星、お前のちっせぇー頃の写真ヤバいな」
「どれだけ可愛くても、幼い頃の星はやらんぞ」
スーツのジャケットをオレの勉強机の上に投げ捨て、締めたネクタイを解いた状態で呑気に笑う二人。家に来た時の堅苦しい姿はどこにもなく、むしろ二人ともオレや兄ちゃんの写真を見つめて頬を緩めている。
「いつの時の、どの写真見てんの……もう、父さんは母さんが呼んでるからリビング行ってきて!雪夜さんは、オレと一緒にアルバム片付けてっ!!」
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