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第864話
【雪夜side】
星の父親と話し込んで、その後は昔話を聞きつつアルバムを眺めて。光の決断を待つまでの間、俺は星の父親と距離を縮めていた。
子煩悩な父親は、写真を見つめ涙ぐみながらも俺に星と光の話をしてくれて。可愛過ぎる二人の写真は、どの場面でも愛情を感じるものだった。
俺が可愛いと素直に洩らせば父親は嬉しそうに笑い、そして寂しそうに息を吐いての繰り返し。子離れしているようでそうでない親の姿を真近で見た俺は、星をより一層愛していこうと心に誓った。
そして。
部屋へとやってきた星くんに、俺は何故か怒られて。開いていたアルバムを仕方なく閉じ、片付けしている最中に光の姿を見つけた。
家に上がることは出来ないからと、そう言って外で待つことを俺に話してくれた優。その優の元へと自らの足で向かった光は、もう繋いだ手を離すことはないだろうと思って。
内心、こんなに上手くいくわけはないと。
そう思っていた俺は、僅かな可能性に賭けた自分の決断が間違いではなかったことに安堵した。
艶のある黒髪を撫で、星と共に光と優の姿を眺めて。描いた幸せを手に出来る事実を知り、この先も星と二人で過ごしていきたいと俺は強く思った。
「今から、優さんも挨拶するのかな?夕飯、優さんも一緒にって母さん言ってたから、雪夜さんも一緒に夕飯食べていきますか?」
そう言って、ふにゃりと笑った星くん。
あの両親に、この兄弟、そして優までいる食卓ってのは、なかなかにカオスな気しかしないけれど。
「星の母さんがいいなら、俺も夕飯食ってく」
「良かったです。じゃあ、今日はみんなでお祝いのホームパーティーですね」
ルンルン、なんて。
効果音が聞こえてきそうなほどに、胸をときめかせている星くんが可愛い。
「お前は本当に天使だな、いつまで経ってもそれは変わらねぇーのかも。お前の親父が言ってた、子供は天使で親の宝だって」
「オレは、そんなに綺麗な生き物ではないです。人間って、醜さとか色んな感情を持ってるから……だから、天使みたいに綺麗なままじゃいられないです」
「そんでも、お前の親から見れば天使なんだよ。まぁ、その天使を俺がもらうんだけどな」
悪魔だろうが、天使だろうが。
星が俺の隣で笑ってくれるのなら、俺は星がどんな姿だろうと構わない。
腑に落ちてない顔をしつつも、照れ混じりに微笑む星を抱き締めて。この部屋で初めてしたキスを思い出しながら、俺は星の唇にそっと口付けていく。
「んっ…」
懐かしい記憶が鮮やかに蘇り、少しの緊張感が襲う。この場所で出逢ったあの日、全ての始まりの場でもう一度、星に触れて思ったこと。
「星、愛してる」
この想いに、偽りはない。
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