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第865話

「オレも、雪夜さんが大好きです」 ぎゅっと俺に抱き着いて、愛らしい笑顔を向けてくれる星くん。笑顔の中でも、特に俺が好きな表情を見せてくれる幸せいっぱいの恋人を抱き締め、繋がり合いたい思いを堪える。 安堵感と、緊張感。 触れられる距離にいる仔猫さんを前にして、俺は可愛がり倒したい欲に襲われるけれど。 さすがに、この場でおっ始めることは出来なくて。反応しそうなカラダの意識を逸らすために、俺は星から視線を外すと部屋の中を見渡した。 勉強机の上にあるルービックキューブ、小さな瓶の中に入った貝殻。小物が多い星くんの部屋だが、整理整頓はされている。 そして。 「……懐かしいもん飾ってあんな、射的の景品か」 壁掛けのちょっとしたスペースに並んでいたのは、夏祭りで俺が取ってやったウサギとライオンのぬいぐるみだった。 「大事な宝物なので。あ、でも……俺よりも兄ちゃんの方が、そのぬいぐるみで遊んでますけどね」 「ふーん……遊ぶって、こんな感じか?」 星くんを抱いたままずいずいと移動し、ぬいぐるみを手にした俺は星にそう問い掛ける。ウサギの上にライオンを乗っけて、俺が星くんにしたいことをぬいぐるみにやらせて遊んでみるが。 「……雪夜さん、兄ちゃんと全く同じことしないでください。動きがおかしいですよ、動きがっ」 頬を染める星は可愛いけれど。 光と思考が同じことに少しだけ腹が立った俺は、ウサギのぬいぐるみの首元にライオンの頭を持っていき、噛みつかせて遊ぶ。 「……ガルル」 「だからっ、ウサギさん食べちゃダメですって!」 「ウー、ガウッ」 所詮この世は弱肉強食、ウサギはライオンに食われる運命なのだと。ついでに襲われておけと、意味の分からない理由をつけ、俺はぬいぐるみで遊ぶことに楽しさを覚え始めたけれど。 「ガウって、声だけそんなに可愛くしてもダメですからね。もう、むやみやたらとウサギさんをいじめないであげてください」 そう言って俺からぬいぐるみを奪った星くんは、ウサギの頭をよしよしと撫でていて。 「愛情の裏返しだ、愛おしすぎて喰っちまう的なもんだろ。俺もお前のことの喰いてぇーし、今すぐ愛し合いてぇーし」 「んっ、ちょっと……」 ぬいぐるみを持ったまま、身を縮めていく星を後ろから抱き締めて。結局、俺は欲に勝てずに星の耳を甘噛みする。 「……なぁ、星」 イイだろ、と。 俺が聞こうとした瞬間。 「良くないですっ!!」 まだなにも言ってないのに、俺は星くんに怒られた。 「約束したじゃないですか。父さんと母さんの前では、そういう雰囲気にしないって。あと、見えてないところでもダメだって……オレ、雪夜さんにちゃんと言ったもん」 「知ってる……けど、今こうして、お前が俺の腕の中にいんのがすげぇー嬉しいから。あと少しだけ、このままでいさせて」

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