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第866話

怒る星は可愛い、照れる星も可愛い。 どんな星でも可愛くて、可愛くて、可愛いのはいいのだけれど……この状況は、カオスだ。 「優君も飲まないか」 「いいんですか?では……」 「優にお酒を勧めちゃダメ、俺が父さんの相手してあげるから大人しくしててよ」 星に怒られ、その後は星の部屋でのんびり過ごして。夕方、母親に呼ばれ星くんと一緒にリビングに向かった俺を待っていたのは、夕飯の用意だった。 「このキッチンで三人並ぶと、さすがに狭く感じるわね。でも、雪夜君の手際の良さには感動しちゃうわ」 「そうでしょ?雪夜さんってね、本当に料理上手なの。オレがオムレツ作れるようになったのも、雪夜さんが教えてくれたからだもん」 キッチンに立つのは、母親と星と俺。 リビングのテレビの前のソファーに腰掛け、酒を飲んでいるのは父親と光。優も同じ場にいるけれど、優は光に止められ酒を飲むことは出来ないらしい。 俺も、星の父親から酒を勧められたが。 俺は明日の朝から仕事があり今日の夜には自宅に帰らなきゃならないため、酒は仕方なく断った。 料理するのは嫌いじゃないし、忙しそうな母親と星を見兼ねて手伝いをすることにしたのはいいのだけれど。何故、俺が優をもてなす側になっているんだと気づいた時には遅かった。 これじゃあ、普段の縮図となんら変わりない。 ある意味、それはとてもいいことなのだが……なんとなく腑に落ちないのは、俺が優と同じ立場だからなのだろう。 俺も優も、今日初めて恋人の家に挨拶をしに来た彼氏のはず。それなのに、この違いはなんなのだろうと。そんなことを思いつつも、俺は目の前にあるパスタを茹でながら他の具材の下処理をしていく。 「星くん、それ終わってからでいいから冷蔵庫からベーコン出して」 「あ、分かりました。こっちの盛り付けはもう終わるので、雪夜さんがパスタ茹で終えたらオレは唐揚げの付け合せ用でキャベツ切りますね」 「じゃあ、あとは二人に任せて私はコーヒーでも飲んでゆっくりしようかしら。料理上手な息子が二人いると、私が楽できていいわねぇ」 ふふっと笑う母親は、幸せそうに目を細めて俺と星を見る。息子が二人、そう洩らした母親は、もう既に俺を家族として受け入れてくれているのだろうと思った。 「ユキちゃーん、せーいっ、お腹空いたぁ」 「光、ここで騒ぐくらいなら手伝いにいけばいいだろう。私は、優君と雪夜君と酒を飲みたいんだ。雪夜君と場所を変わってきなさい、本来なら光は向こう側の人間だろう」 「んー、別に俺が向こうで手伝ってきてもいいけど。その代わり、父さんは優と一緒に責任持って不味いご飯を食べるんだよ?」 「守さん、この子に何を言っても無駄よ。光は星と違って、家事なんてろくにできやしないんだから」 「……優君。我が子ながら何だが、本当にこんな子がいいのか?」

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