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第876話

準備室の机に突っ伏し寝入ってしまった健史君と、横島先生の昼食を奪って食欲を満たす誠君。そんな二人のあいだでお弁当のおかずを頬張るオレは、とあることを思い出して誠君に問い掛ける。 「誠君さ、車の免許ってどうする?」 入校手続きは済ませたものの、イマイチ仕組みが分からない自動車学校という謎の施設。そこにこれから通わなきゃならないオレは、周りからの情報を得るため誠君に訊いてみたけれど。 「あー、とりあえず単車の免許あっからなぁ……金が貯まったらそのうち取りに行くつもりではいるけど、今は資金ねぇから卒業後になると思う」 「え……誠君って、バイクの免許持ってるのっ!?」 「あれ、お前知らなかったっけ?」 「知らないよっ、乗ってる姿なんて見たことないもん……え、じゃあもしかして健史君も免許持ってたりするの?」 誠君は通学の時にバイクで来ているわけじゃないし、オレは知らなかったことを誠君に聞かされ驚きを隠せない。でも、誠君はニヤリと笑ってオレの耳元でヒソヒソと声を出して。 「チビちゃんの隣で寝てるヤツは、単車の学科試験に何度も落ちたんだ。俺がつきっきりで教えてやってなんとか合格したから、ケンケンの前で免許の話するとすげぇ機嫌悪くなるから気をつけろ」 「そう、なんだ……」 スヤスヤと気持ち良さそうに眠る健史君を見つめ、オレは健史君が力尽きて寝入ってくれたことに心の底から安堵した。 「チビちゃんは、学科より技能の方が問題ありそうだけど……まぁ、なんとかなんじゃね。免許、取りに行くんだろ?」 「うん、家族からも似たようなこと言われてる。オレにハンドル握らせるのは危ないって、オレは運転しない方がいいって」 「適性検査とかやるし、バカなケンケンでも単車の免許は取れたから、チビちゃんなら大丈夫だと思う」 ニカッと笑ってそう言ってくれた誠君は、横島先生から奪い取ったサンドウィッチを美味しそうに食べていて。 「青月が車の運転すら出来ない本当にヤバいヤツなら、この学校に入学出来ていないから大丈夫だ。包丁を握っても大丈夫だと思えるヤツしか、調理学科には入学出来ないからな」 少しだけ不安なオレに声を掛けてくれた横島先生は、缶コーヒーを飲みつつそう言ってくれたけれど。 「ん?ってことは、ケンケンも大丈夫なヤツって判断されて入学出来たワケ?明らかに大丈夫じゃねぇだろ、ケンケンの面接担当した教師って見る目ねぇんだな」 健史君が寝ていることをいいことに、誠君はクスクスと笑ってそう言って。 「……見る目がなくて悪かったな、長谷部の面接を担当したのは俺だ」 横島先生のその言葉で、オレと誠君はお互いに顔を見合わせ、そして二人で横島先生を凝視することになった。

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